1.放射線療法の目的・意義
本章ではホジキンリンパ腫以外の悪性リンパ腫について述べる。新WHO分類(2001年)では、非ホジキンリンパ腫という総括的カテゴリーがないので、今後「非ホジキンリンパ腫」は遡及的研究以外に用いるべきでない1)。標準治療が確立されている疾患群と、疾患概念が確立されたのが最近であるため、現在探求的研究治療が行われている疾患群がある。悪性リンパ腫に対する放射線療法の役割は、新WHO分類別に異なる(表1)1) 2) 3) 4)。標準治療が未確立な疾患群では、患者の同意が得られれば臨床試験やデータ登録に参加することが望ましい。
限局期の低悪性度リンパ腫に対しては、放射線療法単独により治癒もしくは長期寛解が得られる。代表的な例を挙げると、MALTリンパ腫や濾胞性リンパ腫に対する根治照射が挙げられる。
限局期の中高悪性度リンパ腫に対しては、化学療法(CHOP×3〜6:アドリアマイシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン3〜6サイクル)で治癒を目指し、病巣の局所制御を確実にする目的で放射線療法を用いる。注意:短期間の化学療法では、遅発性の遠隔再発が認められる例があるので、後述の予後因子別に化学療法の強度を適切に判断する必要がある。
高悪性度リンパ腫や進行期例に対しては、化学療法により寛解を目指す。放射線療法は化学療法後の残存病巣や巨大病巣への追加治療として用いられる場合がある。追加照射の意義について合意はない。全身治療(化学療法や抗体療法)の投与量・サイクル数によって、放射線療法の線量・照射野は変更する。
小児において放射線治療は、緊急時(神経系への浸潤・気道狭窄や上大静脈閉塞などの腫瘤による圧迫症状)に適応とされる。こうした場合、小線量で目的を達成できる。
特殊な節外性リンパ腫の治療については、発がん過程や悪性度・臓器の解剖学的特異性・化学療法の到達度などにより、固有の戦略が検討されている。放射線治療が重要な役割を果たす代表的な例を挙げると、中枢神経リンパ腫に対する「脳血流関門移行性化学療法+放射線療法」(研究治療)、鼻NK/T細胞リンパ腫に対する「薬剤耐性克服化学療法+放射線療法」(研究治療)などが挙げられる。その他に、放射線治療以外の一次治療としては、胃MALTリンパ腫のピロリ菌除菌療法(ほぼ標準治療)、皮膚T細胞リンパ腫の紫外線治療(ほぼ標準治療)があることを覚えておくべきである。詳細は教科書を参照されたい3) 4)。
悪性リンパ腫の発がん過程には、ウイルスや免疫系の不調が密接に関連している。成人T細胞リンパ腫・後天性免疫不全関連のリンパ腫・臓器移植関連リンパ腫など特殊な疾患群の治療に関しては、各々の臨床試験の概要を参照されたし。
| 新WHO分類(2001) | 限局期 | 進行期 | |
| 低悪性度 | Follicular lymphoma Marginal zone B-cell lymphoma |
Definitive RT (RT) |
Palliative RT (R-CHOP) |
| 中高悪性度 | Diffuse large B-cell lymphoma Anaplastic large cell lymphoma Peripheral T-cell lymphoma |
Adjuvant RT (CHOP±IF-RT) |
Adjuvant RT Palliative RT (CHOP±boost-RT) |
| Extranodal NK/T-cell lymphoma Mantle cell lymphoma |
Definitive RT ? (investigating) |
Palliative RT (investigating) |
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| 高悪性度 | Precursor or blastic lymphomas Burkitt's lymphoma |
Adjuvant RT Palliative RT Prophylactic cranial irradiation (investigating) |
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| 特殊節外性 | Cutanenous T-cell lymphoma | TSEBT, RT | (investigating) |
| NK/T-cell lymphoma (nasal type) | RT (investigating) | (investigating) | |
| Primary CNS lymphoma | (investigating) CNS oriented CTX |
(-) | |
| 特殊な病態 | Adult T-cell lymphoma | (investigating) | (investigating) |
| AIDS-related lymphomas | (investigating) | (investigating) | |
| RT: | 放射線治療 |
| TSEBT: | Total skin electron beam therapy |
| NK/T-cell: | Natural killer/T-cell |
| CNS: | central nervous system |
| CTX: | 化学療法 |
| CHOP: | アドリアマイシン+シクロフォスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン |
| R-CHOP: | リツキシマブ+アドリアマイシン+シクロフォスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン |
| ()内は標準治療を示した。多くの悪性リンパ腫については、いまだ標準治療が未確立である。 | |
| その場合は investigating と記載した。 | |
2.新WHO分類・予後因子分類による放射線療法の適応
新WHO分類と International prognostic index(IPI)によって治療方針が検討されるので、それにそって放射線療法の適応が決まる。IPIには、Ann Arbor 病期・年齢・PS(Zubrod)・LDH値・節外病巣数が挙げられ、予後因子の点数化により4段階の risk group に分けられる。
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積極的な放射線療法の適応である限局期とは Stage I、contiguous Stage IIである。contiguous Stage II とは、「1節外性病変と隣接する1リンパ節領域もしくは連続する2リンパ節領域」を示し、一連の照射野(involved field)で放射線療法が可能な病期を意味する。Stage II は、更に contiguous Stage II とその他に分けることがある。UICC-2002、AJCC-6th では、節外性リンパ腫の Stage II の規定が Ann Arbor 分類と異なるので、注意を要する。リンパ節領域は、Kaplan のリンパ節領域定義を修正したAJCC規定を用いることが一般的である。その際、鎖骨上窩は頸部に、肝門部は傍大動脈領域に一括されているので注意する。鼠径大腿部と同様に、鎖骨下と腋窩も一括した方が実際的である。従来 involved field とは、リンパ節領域を照射することを意味したが、欧米のがん治療施設では各々に照射範囲を修正して用いている。リンパ節領域が、リンパ潅流を考慮した解剖学的区分としてではなく便宜的に決められたことを考慮するためである。
3-1 標的体積:画像診断基準と標的体積決定方法を述べる。
GTV:腫瘍の最大進展範囲をGTVとし、治療開始前に主にX線CTを用いUSやMRIおよび理学的所見を参考にして決定する。画像診断基準は、節性病巣では「短径が1cm以上のリンパ節腫大」をさし、節外病巣では「X線CTで認められる軟部腫瘤濃度域」である。
CTV:Involved field の概念が確立された節性病巣と、固形がんの放射線療法経験を応用した節外性病巣の場合に分けて述べる。一般にCTVには、リンパ腫に対する手術創および生検創は含めることが望ましい。
節性病巣のCTVは、原則として病巣の存在するリンパ節領域(AJCC のリンパ節領域)とする。2リンパ節領域以上にまたがる病変では、両リンパ節領域をCTVとする。リンパ節領域の境界に近い病変の場合は、リンパ潅流に沿った進展予測範囲まで、すなわち、隣接するリンパ節領域の一部もCTVとする。
節外性のCTVについて、教科書には総論的な規定が示されていない。節外性悪性リンパ腫には、臓器ごとに眼窩付属器のMALTリンパ腫や鼻腔のNK/T細胞リンパ腫などの特殊なリンパ腫が認められる。リンパ腫細胞の遊走能の高さ・リンパ系組織の解剖・制御に必要な線量と発症臓器の耐容線量などを考慮してCTVが決められる。
PTV:CTVから、呼吸性移動や患者固定の再現性誤差(照射野が大きいので5mmは許容される)などを考慮し設定する。可能ならばPTVが90%等線量曲線で囲まれることが望ましい。胸部照射の際には、放射線肺臓炎が致死的になる危険性を考慮して、次の注意事項が挙げられている。
a) 胸部照射のCTVは、GTVから頭尾側に5cm、左右に1.5〜2cmの距離を保てば、必ずしも縦隔全体を照射する必要はない。 b) 縦隔・肺門リンパ節病巣に照射する場合は、分割せずにひとつの照射野に含める。両側の肺門を含める場合は、特に化学療法後は、肺臓炎に注意して cone-down することが望ましい。 c) 肺・胸膜に浸潤していないリンパ節病変が化学療法により縮小した場合、健常肺野への過剰な照射を防ぐため、GTVを初診時の病巣範囲とせずに残存病巣や正常化したリンパ節として、CTVを治療後GTVから左右方向に1.5〜2cmに設定する。
化学療法が先に行われることが多いので、これまでの身体所見記録および病巣部位の最大進展範囲を示すCT・MRI画像を必ず準備し、設定時にGTVが確認できるようにすることが重要である。CTVの中心付近に(空中にならないように)標的基準点を置き、位置決め写真を撮影する。診断画像を参照してGTV・CTVを位置決め写真上にマークし、internal margin と set-up margin を考慮して PTVを設定する(図1)。
三次元放射線治療計画は、基本的には二次元治療計画と同じである。病巣進展範囲を充分含む範囲を広めにCT撮影する必要がある。
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節性病巣には前後(左右)対向二門照射などの単純な照射方法が用いられてきた。節外性病巣について、個々の臓器で固形がんの放射線療法技術に準じた照射法が用いられてきた。適切なエネルギー・照射法を用いて、処方線量を標的体積に均等に照射するように努める。
限局期低悪性度リンパ腫に対しては、30〜36Gy/10〜20回/2〜5週(1回線量1.5〜3Gy)で十分であるとする幅広い合意がある。
限局期中高悪性度リンパ腫に対して3サイクルのCHOP療法後に放射線療法を用いる場合は、40〜55Gyが適切である(SWOG-8736)。化学療法の薬剤投与量を減量した場合や投与期間を短縮した場合での40Gy未満の線量の有効性は、まだ確認されていない。8サイクルの標準CHOP療法によりCRになり放射線療法を追加した場合では、30Gyでも有効である(ECOG-1418)。CHOP療法に対するPR・Slow-responder の場合の至適線量は不明であるが、一般に50Gyを越えて有用であったという報告はない。化学療法が行えなかった場合は、50〜55Gyが適切であると報告されている。また腫瘍の大きさにより照射線量を修正する考えもある。
高悪性度リンパ腫や進行期症例における化学療法後の残存病巣や巨大病巣への追加放射線療法の至適線量は不明である。
特殊な節外性リンパ腫病巣への放射線療法の至適線量は、いまだに検討中である。特にNK/T細胞リンパ腫には46〜50Gy以上の線量が必要と考えられている。
限局期の低悪性度リンパ腫に対しては、初回の併用療法の必要性は確認されていない。CD20陽性のB細胞リンパ腫に対しては、分子標的薬剤であるリツキシマブの併用が検討されている。
中高悪性度リンパ腫に対しては、CHOP療法が標準化学療法であるが、CD20陽性のB細胞リンパ腫に対しては、リツキシマブ併用CHOP療法(R-CHOP)が標準治療となった。
高悪性度リンパ腫や進行期症例に対しては、化学療法CHOP(R-CHOP)療法が標準治療とされるが、満足すべき治療成績ではない。研究治療・臨床試験に参加されることが推奨される。
限局期低悪性度リンパ腫に対する放射線療法単独の5年生存率は70〜90%である。
限局期中高悪性度リンパ腫の化学+放射線療法による5年生存率は65〜85%である。
高悪性度リンパ腫や進行期例の化学療法による5年生存率は25〜60%である。
急性毒性の評価は、NCI-CTC version 2.0 日本語訳JCOG版を、遅発性有害反応の評価は、それに添付された RTOG/EORTC Late radiation morbidity scoring scheme 日本語訳JCOG版を用いると容易である。
照射範囲が広いため放射線性脊髄症・甲状腺機能低下症に注意を要する。放射線唾液腺障害は回復しがたく、齲歯予防のため口腔衛生管理が重要である。化学療法後に放射線療法を行う場合には、遷延する骨髄抑制による感染症、帯状疱疹、重症粘膜炎・肺臓炎を認めることがある。アンスラサイクリン系薬剤投与後は左心室への線量を抑える。有害反応の頻度は、全身療法の有無と照射部位と線量により異なる。最も発生頻度の高い限局期中高悪性度リンパ腫に対する「短期化学療法+放射線療法」についてSWOG-8736のデータによると、治療完遂率は98%であり、重篤な有害反応(CTC: grade 4の好中球減少など)の割合は約30%であった。化学療法単独群の完遂率86%および有害反応割合40%と比較して、より安全に実施可能である。
6.参考文献
| 1) | World Health Organization classification of tumors. Pathology and genetics of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues (edited by Jaffe ES, Harris NL, Stein H, et al). IARC Press, Lyon, France, 2001. |
| 2) | Part XII Lymphoid neoplasms. AJCC Cancer staging manual, 6th ED. Springer-Verlag, 2002. |
| 3) | The Lymphomas (edited by Canellos GP, Lister TA, Sklar JL). W.B.Saunders co. Philadelphia, USA, 1998. |
| 4) | Malignant Lymphoma (edited by Hancock BW, Selby PJ, MacLennan K, Armitage JO). Arnold, London, UK, 2000. |
| 5) | The International Non-Hodgkin's Lymphoma Prognostic Factors Project. A predictive model for aggressive non-Hodgkin's lymphoma. N Engl J Med 329: 987-994, 1993. |
| 脚注 | EORTC: | European Organization for Research and Treatment of Cancer |
|---|---|---|
| ECOG: | Eastern Cooperative Oncology Group | |
| DHSG: | Deutsche Hodgkin Studien Gruppe | |
| GELA: | Groupe d'Etude des Lymphomes d'Adulte | |
| SWOG: | Southwest Oncology Group | |
| RTOG: | Radiation Therapy Oncology Group |