聴力について

小耳症における聴力

小耳症においては、通常外耳道閉鎖(穴が埋まっている)、または外耳道狭窄(穴が細い)を伴っています。
中耳は内腔が狭く、耳小骨の変形を伴うことが多く、伴に聴力の低下が生じます。
正常の耳では聴力は0~20dBですが、外耳道閉鎖では70dB以上(太鼓の大きな音などが聞こえる)、外耳道狭窄では50db以上くらい(大きな声で話せばある程度聞こえる)であることが多く、全く聞こえていないわけではありません
また、内耳は比較的正常に近い状態が維持されています。
平衡感覚を司る三半規管は内耳にあるので、小耳症だからと言ってバランス感覚に影響することはまれです

片側小耳症の場合

片側小耳症の方では、日常生活で問題となることは少なく、患側から呼びかけられた時や、ざわざわしているところで聞き取りにくい、また、後ろを車が通った時、どちらから向かってきたか方向の判断がつかないことがあります。
しかし言語発達や学習能力においては何ら劣るところはありません
なお、一見問題がないように見える反対側の耳でも、聴力低下を伴っている可能性があるので、生後一度は聴力検査を行っておいた方がいいでしょう。 

両側小耳症の場合

骨導補聴器を利用して早くから音を入れてあげることが重要です。
適切に音が入らないと言語発達や学習能力の遅れに繋がりますので、耳鼻科医と相談しながら進めてください。 

聴力検査

詳細は耳鼻科でお聞きください。
一般的に生後早期に行う聴力検査としては、ABR(聴性脳幹反応検査)が代表的です。
これは睡眠時に音を入れて、脳派の変化を調べる検査です。これにより、どちらかの耳で音を拾っていれば、聞こえているということになります。
ただし、この検査も極めて正確とは言えず、あくまで指標です。
従って、検査のたびに数値が変化する可能性があるので、前より良かった、悪かった、と一喜一憂するようなものではありません。
また、成長によって現在の聴力が下がるということはあまりなく、毎年必ず聴力検査が必要ということはありません。
ただし、聞き返すことが増えた、テレビに近寄って音を聞くようになった、など変化がある場合は、中耳炎等により聴力低下が起こっている可能性もあるので、耳鼻科を受診して確認しましょう。 

聴力改善の手術について

外耳道を形成する手術が古くから耳鼻科医によって行われてきましたが、その効果の少なさ、合併症の多さから、次第に行われなくなって来ています。
外耳道形成直後は多少聴力改善の認められる方もいますが、2、3年の経過で元に戻る方が圧倒的に多いのが実情でしょう。
現在も一部の施設では積極的に行っているところもあり、医学の発展という点からは、それを否定するものではありませんが、治療を受ける際には利点、欠点に関する説明を聞き、十分考慮したうえで決めていただければと思います。 

BAHAについて

BAHAの画像
BAHAとは埋め込み式補聴器のことです。
歯のインプラントと同様のメカニズムですが、側頭部(耳の後ろ)の骨を削り、そこに金属の装置をはめ込みます。
金属の一部が皮膚から出るようにして、そこに補聴器を取り付けるもので、カチューシャ型の補聴器を付けている方は、カチューシャを使用する煩わしさから解放されるという利点があります。
両側小耳症の方にとっては有効ですが(15歳以上で保険適応にもなっています)、片側小耳症の方においては、普段不自由をあまり感じていない方にとって、かえってそのメインテナンスを煩わしく感じるかもしれませんので、本人がある程度理解、判断できる時期になってから、適応を判断することをお勧めします。