口蓋裂の治療

手術時期

言語の問題と発育面の問題を考慮して時期を決める必要があります。
言語を獲得し始める時期に口蓋が閉鎖していないと正しい言語の獲得が難しくなる一方、顎(うわあご)の発育の面からはあまり早い時期の手術は成長を妨げてしまう懸念があります。
これらの点から、1歳半前後で計画するのが最も良いと考えられています。
手術までの流れは「口唇裂」とほぼ同様です。
「口唇裂」のページの「外来初診」「入院日が決まったら」「入院」「手術当日」の項をご覧ください。
口唇裂の治療はこちら

手術時間は大体2~3時間位ですが、状態によって変化します。
入院期間は同様に2~3週間くらいが目安です。 

手術方法

口蓋裂に対する口蓋形成術

  • 口蓋形成術の画像
    口蓋形成術の模式図(Push-back法による手術の場合)
口蓋裂手術の目的
  1. 裂部位の閉鎖
  2. 筋肉の再建
  3. 鼻咽腔閉鎖機能の獲得
  4. 正常言語の獲得
上記の目的を果たすため、当科ではPush-back法、またはFurlow法を状態に応じ使い分けて行っています。
本法は、確実な裂の閉鎖と筋層再建が行え、また口蓋粘膜全体を奥(咽頭側)に押し下げることで、鼻咽腔閉鎖機能をより効果的に再建することが可能です。
全身麻酔で、手術時間は約2~3時間です。
なお、本手術では顎裂の閉鎖はできません。
顎の発達の問題から、後日新たに行うことになります(その後の治療は下記のページの小中学生の項をご覧ください)。
不全唇裂の治療例
  • 不全唇裂の画像

手術後の経過(退院まで)

手術直後 口蓋裂の手術では、口に器具を装着して、口を大きく開けた状態で手術をするため、術後、唇・舌・顔が腫れることがあります。
数日で腫れは引きますので心配はありません。
また、口の中の手術では、創部からの出血や唾液などが口の中にたまり、呼吸がしづらくなる場合があるため、口腔内の吸引などを行いながら注意深く経過をみます。
まれに手術終了時にのどの奥の腫れが強く出現する場合がありますが、この場合には、大事を取って、手術後ICU(集中治療室)でしばらく様子を見てから病棟に戻る場合があります。
食事 口の中の手術ですので、食事によって創部が不潔になりやすいため、術後しばらくは口唇裂と同様に、鼻からチューブを入れ、そこから栄養を入れます。
創部の状態をみながら、経口摂取(口からの食事)へ徐々に移行していきます。
一般的には以下のスケジュールで行います。
  • 術後2日目:経腸栄養+水・お茶の経口摂取開始
  • 術後7日目:流動食の経口摂取を開始、摂取良好ならチューブを抜去
  • 術後10日目:3分粥開始
  • 術後12日目:5分粥開始
  • 術後14日目:7分粥開
創の処置 口腔内の創部には、薄いガーゼを貼り付けて創部を保護します。
自然にはがれるまでつけておきます。
創は溶ける糸で縫合しますので、抜糸は不要で、傷自体の処置はありません。
術後7日目から経口摂取が始まりますが、食事の後にはうがいをさせる、あるいはお茶・水などを飲ませるなど、口腔内の衛生に注意が必要です。
歯磨きは、創部をつついたりしないように注意しながら行います。
硬いものの経口摂取は禁止です。
手術により裂が閉鎖されても、いきなり鼻からの水漏れがなくなったりするわけではありません。
あせらず様子を見ましょう。
創が安定したら退院となります。
術後の
合併症
元々、不足気味の粘膜を利用して閉鎖するため、傷の緊張が強かったり、創部に感染したりすると、口蓋に穴が空くことがあります。
この穴を瘻孔といいます。
瘻孔が形成されても、すぐにふさぐ再手術は行わず様子を見ます。
退院後の経過で、言語に影響があったり、食物が鼻にもれたりと、日常生活に支障をきたす場合には、再手術を計画します。
その後の治療は下記のページの就学前、「口蓋裂に対する追加手術」の項をご覧ください。
口蓋裂に対する追加手術はこちら

外来通院

退院後は、外来通院で経過を観察していきます。
はじめは月に1回程度通院していただき、徐々にその間隔を長くしていきます。
ご自宅でも以下の点に注意します。
  • 食事は、指示があるまで、全粥程度のやわらかさのものを摂取する。
  • 口腔内の衛生に注意する。