まぶたは皮膚、筋肉、筋膜、結膜、軟骨(瞼板)、皮脂腺、汗腺、毛といったさまざまな組織から構成されているため、いろいろな腫瘍ができやすいのが特徴です。
このページでは代表的な腫瘍をいくつか紹介し、また治療法について解説します。
ものもらいは、まぶたが腫れて痛みやかゆみがでてくる疾患です。2種類あります。
1.
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
まぶたにある脂腺や汗腺に細菌が入り、感染をおこして腫れたものです。
細菌感染症ですので、治療は抗菌薬の軟膏や点眼液の塗布、内服薬の服用です。
2.霰粒腫(さんりゅうしゅ)
まぶたにある脂腺(マイボーム腺)にあぶらがたまり、炎症をおこしたものです。
治療は、手術が必要です。部分麻酔(局所麻酔剤の注射)にて皮膚側、またはまぶたの裏側から切開して、たまったあぶらをかき出します。
左が術前、右が術後です。
皮膚内に、脂質(あぶら)を食べた細胞が増えることにより発生する淡黄色の良性腫瘍です。平坦で、境界がはっきりしており、上まぶた内側に、左右対称性に発生します。高脂血症と関係があるといわれています。
治療は、局所麻酔にて摘出します。
左が術前、右が術後です。
皮膚の角質が増殖した良性腫瘍です。まぶたのふちに好発します。
手術により治療します。局所麻酔の注射を行い、切除します。
左が術前、右が術後です。
加齢により出現する良性腫瘍です。
治療は、手術にて切除します。
思春期以降の女性のまぶたによくできる良性腫瘍です。
治療は、数が少ない場合は一個ずつ表面を削るか、液体窒素にて凍結させます。大きい場合は切除が必要です。
まぶたの上外方によくできる、幼少児に多い良性腫瘍です。母体内のうちに、皮膚が奥にめり込んでしまうことで発生すると言われています。
手術にて切除します。幼少児では全身麻酔の手術となります。
皮膚にメラニン色素を含む細胞(メラノサイト)が集まってできている腫瘍です。生まれつきのものや、加齢により徐々に出現するものもあります。
治療は手術が基本となりますが、レーザー治療を併用することもあります。局所麻酔、または全身麻酔で治療します。
数mm程度の小さいものは単純にくりぬいても傷あとはあまり目立たずに治ります。大きいものは切除後、周囲の皮膚を切開してずらしたり(皮弁)、他の部位から皮膚を移植したりして(皮膚移植)機能的・整容的に問題がないように治療します。
表皮を構成する基底細胞が増殖した腫瘍で、まぶたの悪性腫瘍のなかでは最も多い腫瘍です。遠隔転移はまれで、比較的悪性度の低い腫瘍です。
治療 手術による全切除が必要です。放射線治療を併用することもあります。
☆まぶたの黒いできもの・・良性?悪性?
これらはすべて、下まぶたの同じような場所にできた腫瘍です。とても良く似ていますね?違いはわかりますか?
左の写真は良性の脂漏性角化症(イボ)、中央も同じく良性のほくろですが、右は悪性の基底細胞癌です。左と中央は、形が楕円形で、表面が”つるっ”としていますが、右はやや形がいびつで、表面がイボイボしています。とても似ているできものだと、専門家のわれわれでも見分けがつかない場合もあります。また、見た目以外に、イボやほくろは長年あまり大きさが変化しないのに対し、悪性腫瘍は数ヶ月、数週間の間に急に大きくなる、という特徴があります。
見た目はただのほくろやイボでも、よく似た癌の可能性もありますので、このようなできものが出来た場合は、専門機関の受診をお薦めします。
表皮の角化細胞から発生する悪性腫瘍です。悪性度が高く、発育は早く、進行するとリンパ節・遠隔臓器に転移します。
治療 転移がない場合は手術により切除しますが、転移がある場合は化学療法や放射線療法を併用します。
まぶたの皮脂腺(Moll腺、Zeis腺)から発生する悪性腫瘍です。悪性度は高く、リンパ節に転移しやすい傾向があります。
脂漏性角化症に似ていますが、成長速度が違います。1-2ヶ月で急に大きくなることが多いできものです。
治療 手術により、周囲皮膚も含めて全切除を行います。まぶたの再建手術が必要です。また、放射線治療を行うこともあります。
皮膚の感覚を司る細胞のひとつであるメルケル細胞から発生する悪性腫瘍です。赤く、盛り上がった腫瘍が徐々に大きくなります。悪性度は高く、リンパ節に転移しやすい腫瘍です。
治療 手術により、周囲の皮膚を含めて切除します。欠損部が大きくなる場合は、まぶたを再建する必要があります。手術後、リンパ節に対して放射線治療が適応になります。
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