小児診療コラム > こころと発達外来だより(3)
心理検査について
今回は心理検査についてお話ししたいと思います。
心理士の役割のひとつに「心理査定」があります。患者さんの抱えている問題はどこにあるのか、ということや、どんな考え方をしやすいか、などをとらえ、その後の診察や心理療法に役立てていくために行われます。そのひとつとして心理検査があります。
まず最初に知能検査のことをお話しします。知能検査では<田中ビネー知能検査><WISC-Ⅲ>などの検査があります。これは、検査者の質問に答えてもらったり、道具を使って課題に取り組んでもらったりして行い、知能指数を出す検査です。
知能指数の高さと「勉強ができるかどうか」ということとは少し違います。<WISC-Ⅲ>を作ったウェクスラーは、知能とは「個人が目的を持って行動し、合理的に思考し、自らの環境を効果的に処理する総合的、全体的能力」と定義しています。言い方を変えると、「その人が、自分の目の前の状況や、置かれた状況で判断し、考えて、行動する力」とも言えるかもしれません。
例えば、一つのことを言葉で説明することが上手でも、複雑なことになるとうまく関われない人もいるかもしれません。耳で聞いて色々考えるより、目で見て取り組めるもののほうが得意な人もいるかもしれません。知能検査は患者さんがどういうことが得意で、どういうことが苦手かをとらえるために行います。そして得意なところを伸ばしていけるように、苦手なところをサポートしていけるように役立てていきます。
<WISC-Ⅲ>は5歳以上の患者さんに実施できる検査のため、小児科では<田中ビネー知能検査>も行っています。これは5歳未満の患者さんにも実施でき、<WISC-Ⅲ>より短時間で行うことができます。また、患者さんの保護者の方に聞き取りで行う<乳幼児精神発達質問紙>などの発達検査も行っています。
次に、性格検査のことをお話します。性格検査にもたくさんの種類があります。大きく分けると<質問紙法><投映法>などに分けられます。<質問紙法>はその名前の通り、色々な質問に「はい」「いいえ」などで答えてもらう検査です。<投映法>も検査は色々種類があり、絵を描いてもらう検査や、インクの模様が何に見えるか話してもらうもの、マンガの吹き出しにセリフを書いてもらうようなものなど色々あります。<質問紙法>と<投映法>の特徴は、<質問紙法>は患者さんが意識していることが結果に表れやすい検査で、<投映法>は患者さんが自分で意識していない部分が表れやすい検査といわれています。
いくつかの性格検査を組み合わせて行い、全体から、その患者さんの性格の傾向を考えていきます。ある人は気持ちが外に向かいやすく、活発に活動できるものの、自分が今どういう気持ちなのかじっくり考えることが苦手かもしれません。またある人は他の人との関係に敏感で、なかなか気持ちが外に向きにくいかもしれません。知能検査の時と同じく、性格検査も「こういう結果だからいい」というものはなく、患者さんがどういう考え方をしやすいか、どういう状況では力を発揮しやすいか、どういうことで過ごしづらさを感じているかなどを考えていきます。
いくつかの知能検査や発達検査、性格検査の結果を総合して、患者さんの全体像をとらえられるよう考えていきます。心理検査に取り組むことは患者さんにとって心身ともに負担のかかるものです。心理検査の結果はまず患者さん自身にとって役に立つものにしなければなりません。そしてその後の診察や心理療法、さらに家庭や学校、その他患者さんに関わる方達がどのようなサポートができるかを考えるうえで役立てられるようにしていきたいと思っています。
以上のようなことを目的に心理検査を行っています。心理士の大切な役割のひとつとして理解していただければと思います。
小児科 臨床心理士 武山泰久
参考文献 「心とかかわる臨床心理」川瀬正裕他、ナカニシヤ出版