小児診療コラム > こころと発達外来だより(2)
心理療法について
当科のこころと発達外来では5名の心理士が、心理検査と心理療法を担当しています。今回は「心理療法について」というテーマでお話したいと思います。
心理療法は大きく分けて、言葉による交流を基本とした心理療法と、言葉以外の交流を基本とした心理療法があります。前者の一般的なものが≪カウンセリング≫です。後者の代表的なものとしては≪遊戯療法≫≪芸術療法≫があります。どちらもカウンセラーとの信頼関係を基本にして行われる共同作業です。 その意味ではとても対等な関係であります。巷には沢山の心理療法が存在しますが、今回は≪カウンセリング≫≪遊戯療法≫≪芸術療法≫についてお話していきます。
言葉による交流を基本とした心理療法の最も一般的なものは≪カウンセリング≫と言われているものではないでしょうか。カウンセリングは心理的な悩みや不調をもつ方が、カウンセラーとの対話によって問題を解決していくことを目指します。では、なぜ話すことが心の治療になるのでしょうか?
効果の一つに<カタルシス>というのがあります。カタルシスというのは自己発散と言ったらいいのでしょうか。ため込んでいた物(主に感情)を解放することで、すっきりするという効果です。ストレス発散の一種と考えてよいでしょう。カラオケで思いっきり歌を歌ってすっきりするのに似ているかもしれません。それによってある種の満足感が得られます。二つ目の効果としては<自己肯定感の回復>があげられます。カウンセラーには<傾聴><共感>といった態度が求められます。人は自分の話を熱心にしかも否定せずに聞いてもらえると、安心感が生まれるものです。その安心感が<自己肯定感の回復>につながっていくのです。<自己肯定感>を持てると、自信が生まれ、物事の考え方が前向きになり意欲が生まれます。三つ目の効果は<自己洞察>です。日常とは違う環境でカウンセラーと対話を重ねていくうちに、しかも単なる雑談ではなく、自分にとってとても重要な話題について話し合っているうちに、より深く自分自身のことがわかってくるのです。それはカウンセラーが対話において、気持ちを受け取って“こういうことなのですか?”と返しているからです。自分の姿を鏡で見るといろんなことに気付きますよね。「疲れた顔をしているな〜」とか「髪が伸びてきたな〜」とか。カウンセラーとの対話が自分の気持ちや考えを鏡に映した自分の姿のようによくわかってくるのです。この気付きや自己理解が自分らしい問題(悩み)の対処法(向き合い方)を見出すことにつながるのです。ここで重要なことは、“自分らしい対処法”であることです。カウンセラーから与えられた対処法ではないということです。そのため残念ですが、カウンセリングには即効性がありません。ある程度の時間が必要となるのです。このことは、この後にお話しする≪遊戯療法≫や≪芸術療法≫にも共通しています。
では、次に言葉以外の交流を基本とした≪遊戯療法≫と≪芸術療法≫についてお話しましょう。子どもの発達年齢によってはカウンセリングが難しい場合が多いのです。カウンセリングは対話が基本です。しかしながら年少者は言葉で表現する力が十分に発達していません。そのため成人のような効果は期待できないのです。それから、お話しすることが得意でなかったり、緊張してしまうという方もあるでしょう。そのような場合に選択される心理療法が≪遊戯療法≫や≪芸術療法≫なのです。
≪遊戯療法≫とはもちろん<遊ぶこと>です。≪芸術療法≫には絵画、粘度、陶芸のほか広くは音楽、心理劇、舞踊、写真などほとんどの芸術活動が含まれます。また、≪箱庭療法≫というのもあります。先ほどカウンセリングにおける心理効果のひとつに<カタルシス>をあげました。子どもにとって最もカタルシスが得やすい活動が<遊ぶこと>なのです。また、芸術活動もこのカタルシス効果が得られやすいのです。芸術活動を趣味として持ち、癒しや気分転換、さらには生き甲斐になっていらっしゃる方も多いと思います。カウンセリングの場合も≪遊戯療法≫や≪芸術療法≫の場合も、カウンセラーの態度は同じです。肯定的な関心(傾聴)と共感です。また、対話に相互性があるように≪遊戯療法≫や≪芸術療法≫が日常の遊びや趣味の芸術活動と最も異なるのは、自己完結の活動ではなく、カウンセラーとの交流によって生じる活動であるということです。また、遊びや芸術活動の作品には言葉と同じような自己表現としての意味合いがあります。さらに言うと、言葉にできない感情や言葉にするには抵抗がある気持ちを表現する力も備わっているのです。心のより深いものが表現されやすいといっても良いかもしれません。それらが、一人ではなく、カウンセラーが傍らにいることで安心して表現でき、受け取られるという体験をすることが治療的なのです。ですから、カウンセリングと同じような安心感、自己肯定感が得られるのです。また、作品となったものをカウンセラーと一緒に鑑賞することが時に<自己洞察>につながる場合がるのです。
以上、≪カウンセリング≫≪遊戯療法≫≪芸術療法≫について簡単にご紹介しました。活動の内容は全く違いますが、治療的な意味や効果は共通している部分がとても多いことがわかっていただけたでしょうか?
(臨床心理士 手代木 理子)
参考文献 氏原寛編 心理臨床大辞典 培風館
←「こころと発達外来だより(1)」へ
「こころと発達外来だより(3)」へ →