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ホーム > Research  > 佐藤昇志[腫瘍と免疫学]

Research

腫瘍と免疫学

- 源流 -

我々の教室は病理学教室であり、従って病理診断、病理解剖はその基盤をなします。これは過去も、現在も、そして未来も変わりないでしょう。私どもにとりましては同時にここから得る諸事象が研究のモチベーションであり、研究ソースともなります。これらの基盤をもとに実験病理学的研究が大きな柱となり、最終目的たる人の疾病の理解と制御法開拓につながるわけです。

一言で言いますと我々の教室の研究源流は免疫病態、特に癌における免疫病態の理解にあると言えます。すなわち癌の抗原性とこれに対する生体免疫応答を様々な角度から、様々なテーマを、様々な手法で研究してまいりました。従ってテーマの内容は免疫の様々なジャンルを含みます。当然、癌生物学的な研究も必要になり癌の基礎研究の多くの部分もテーマになり得ます。免疫と癌の多くのカテゴリーを研究するということは、とりもなおさず現代生物学の多くの部分を普段勉強し、研究しているということとイコールです。実際、私ども教室にはいろいろな学部のバックグランドをもつ若い研究者が来室しますが、皆さんそのバックグランドを生かした独創的な研究が可能となっています。

前任の菊地浩吉教授の時代に癌と免疫研究から派生したテーマのうちモノクローナル抗体(mAb)開発によるリンパ球表面抗原解析研究では大きな金字塔をうちたてております。CD20の抗体として有効なL26 mAbは我々の教室で当時在室されていた高見現岐阜大教授らが開発されたものです。この抗体はその後病理学的なB細胞リンパ腫等のマーカー判断に世界的に使われている標準抗体となっております。抗CD20抗体治療が日常臨床で応用されている今日、その貢献度は圧倒的なものとなっています。また、CD20ばかりでなく、様々なCD mAbを開発し、この分野で大きな伝統を築いたといえます。

このようなひとつの抗原研究やその発展により医学、科学に大きく貢献できることを経験した教室や研究者は、次なる目的に向かい質、量ともに研究活動を活発化させてくれました。そこからは自分の癌細胞に反応するTリンパ球クローンの樹立や、それが認識するヒト癌抗原遺伝子クローニングの成功もありました。また1980年代からはじめた癌幹細胞/癌起始細胞に発現する癌抗原解析の研究から熱ショック蛋白質が癌抗原の免疫学的制御に重要との独自の発見もありました。また、今日、癌幹細胞/癌起始細胞の表面マーカーとされているCD44も世界に先がけて発見されています。これらはその各々が教室の柱となり、世界的な研究に発展するための最も重要な側面、すなわちオリジナリティを保っていくことにつながっているわけです。

- 現在 -

教室の源流たる癌と免疫の研究は現在も脈々と続いております。まさに継続は力なりでヒト癌抗原の研究では世界的にもメジャーな研究室と自負しえます。一昔前まではなかなか困難であったヒト臨床試験も我々オリジナルの癌ワクチン候補について1外、整形外科、口腔外科、泌尿器科など臨床教室および市内のいくつかの病院、あるいは他大学、国立がんセンターと共同で2003年から開始、現時点で丸9年以上経過し、様々な癌種で200名以上の患者さんに試験投与されております。

現在大きな光明をはなち将来の癌ワクチン候補も手中におさめつつあり、大きな夢となりつつあるところです。これらの研究は大学院時代を第1病理で過ごし、現在、各教室の教授、助教授、講師クラスの方々により担われております。すなわち、若い時のモチベーションが基盤となり、はじめて可能となった研究成果でもあり、第1病理の歴史と伝統によるところが多大であると思われます。

病理学教室の責務を大いに前面に出し、2005~2006年世界で初めて病理パラフィン切片で解析可能のHLAクラスI抗体の開発にも成功し癌免疫ばかりでなく、免疫疾患全体の病理学に大きく貢献しつつあります。癌幹細胞/癌起始細胞に発現するヒト癌抗原の研究では世界の先端を走っていると自負しており、この細胞を標的にする癌ワクチンの世界で第一番目の臨床試験も開始されています。また、HSPの研究も進展し、癌ワクチン抗原性のエンハンサーとしていずれ強力な力を発揮するでしょう。HSPの分子シャペロンとしての活性は神経の変性疾患制御法開拓の研究としても発展しています。また、免疫学の基本的課題、免疫寛容、免疫応答の研究にもオリジナルの研究があります。すなわちT細胞応答に関して胸腺内でのT細胞セレクションによる免疫寛容獲得にp53ファミリー蛋白が大きく関与することも明らかにしてきました。ヒトメモリーT細胞の研究に現在大きな力を入れており、今後教室の大きなテーマとなることを期待しています。

- 夢と皆さんへのアピール -

未来は自分たちにより変えることが出来、つくられるはずです。小児マヒや天然痘が免疫で制御されました。癌に免疫は確実に、いや100%の確率をもって普段働いています。なぜなら我々が開発したHLAクラスI抗体ではじめてわかったのですが、

HLAクラスI発現がない癌患者は確実に早く死亡するからです。免疫で癌を治療する最大の利点は副作用が少ないことです。癌を特異的に破壊できることです。まだいつとはいえませんが、しかし必ず免疫の力で、制御法で、自らの寿命を全うできる時がくると私どもの教室は信じております。

21世紀後半以降はがん免疫治療はがん治療の主座になるであると私は推測します。なぜなら最もナチュラルな治療法であり力づくの治療法ではないからです。人類の将来は、そのような治療法が望まれるだろうと確信します。その意味において若い力をもつ皆さん、この魅力ある夢の実現に向かい共にチャレンジしませんか。

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