神経内科セミナー
第10回神経内科セミナー:2008.3.25.
札幌医科大学脳神経外科講座 本望 修 先生
自己骨髄幹細部を用いた脳梗塞治療へ向けて

「いったん損傷が生じた中枢神経系の再生は困難である。」という考えは現在も一般的に信じられています。ところが、近年の生命科学の進歩によって、自己複製能と多分化能を有する「幹細胞」が発見されたことにより、脳神経の病気に対しても、再生医療という新しい治療が期待されるようになりました。
神経再生医療におけるドナー細胞の確保は、必ずしも容易なことではありません。期待される治療効果、副作用、感染症、免疫拒絶反応、倫理問題、細胞供給体制、社会事情、実現の可能性をトータルでバランスよく検討し最良の選択をすることが必要です。ドナー細胞として有力な候補は、ES細胞、胎児由来の神経幹細胞、成人由来の神経幹細胞、骨髄由来細胞が有力ですが、私達は、生着能、増殖能、分化能、分化制御技術の確立、遊走能、神経機能再建能、細胞確保の見込み、自家移植の可否、および実現性について検討した結果、骨髄由来の細胞、特に骨髄幹細胞が最も適切と判断し、実用化を目指しています。
骨髄中に存在する細胞をドナー細胞として使用する場合、自分の細胞を使うことができるので、感染症、免疫拒絶反応、倫理面での諸問題がありません。また、大きな利点として、脳神経の損傷した部位への直接移植のほか、静脈内投与でも治療効果が期待でるのです。静脈内に投与された骨髄幹細胞は、脳損傷の部位に到達して、死にかけている神経細胞を助けると同時に、自らも神経細胞になって治療効果を発揮します。ご存知のように、骨髄移植は、既に白血病の治療などで行われている治療であり、安全かつ非侵襲的に十分量のドナー細胞が確保できることが判明しています。我々は、自己の骨髄の中にある幹細胞を用いて脳梗塞を治療することを試みており、本セミナーでは、その一部を紹介するとともに、脱髄性疾患への応用の可能性も検討します。
第9回神経内科セミナー:2007.12.11.
北海道大学大学院薬学研究院 薬理学 南 雅文 先生
神経細胞傷害によるグリア細胞活性化のメカニズム

脳は、神経細胞のほかにも、アストロサイトやミクログリア、オリゴデンドロサイトなどのグリア細胞や脳血管を構成する血管内皮細胞など様々な細胞種により構成されており、さらに、脳梗塞や多発性硬化症などの疾患時には白血球やリンパ球などの血球系細胞も脳実質内に浸潤する。これら脳を構成する多様な細胞間の相互作用は、種々の中枢疾患の病態形成機構およびその治療薬の作用を考える上で極めて重要であると考えられるが、これら細胞間の情報伝達の物質的基盤はほとんど不明のままである。例えば、神経細胞が傷害を受けると、周囲のアストロサイトやミクログリアが活性化することはよく知られた現象であるが、傷害された神経細胞からアストロサイトやミクログリアへの活性化シグナルが何であるかは全くわかっていない。我々は、これまでに神経細胞傷害によるグリア細胞活性化のメカニズムを明らかにするため、脳スライス培養系や神経−アストロサイト培養系を用いた研究を行ってきた。本セミナーでは、グリア研究におけるこれら培養系の有用性について論じるとともに、神経細胞傷害によるアストロサイトでのケモカイン産生誘導にMAPキナーゼカスケード、特に、MEK-ERK系が関与していることを明らかにした我々の研究成果について紹介したい。
第8回神経内科セミナー:2007.11.27.
札幌厚生病院神経内科 静川裕彦 先生
市中病院での神経内科診療

近年、神経内科の需要が益々高くなっていると確信していますが、北海道内においては神経内科に対する認知がまだ十分ではないと日々感じています。今回は比較的規模の大きい市中病院の勤務医である演者は、敢えて純粋な脳神経・筋疾患でなく、他科で扱う癌や糖尿病などのありふれた疾患の神経合併症を中心に取り上げて討議したいと思います。他診療科と神経内科の関わりが実に日常的なもので、今や必要不可欠であることを学生の皆さんにも知って頂ければと思います。
第7回神経内科セミナー:2007.10.30.
国立病院機構東埼玉病院神経内科 鈴木幹也 先生
神経筋疾患の呼吸困難感

呼吸困難感は,呼吸に伴う不快な感覚の総称で,日常診療で呼吸困難感をコントロールすることは,患者のQOLを考える上で非常に重要である.
神経筋疾患は,呼吸不全の進行や呼吸器感染に伴い呼吸困難感を生じうる.多くの場合は,呼吸困難感が強すぎる時が問題になり,人工呼吸器による呼吸管理を行ったり,原疾患治療したり,あるいは薬剤を投与したりして,その不快な症状を軽減させる必要がある.
一方で,呼吸困難感が弱い場合が問題になる頻度は少ない.
呼吸困難感を生じる機序は十分にはわかっていないが,筋強直性ジストロフィーという疾患を通して,呼吸困難感について考えていきたい.
第6回神経内科セミナー:2007.8.28.
済生会小樽病院神経内科 松谷 学 先生
地域医療における神経内科診療

「神経内科学徒は煩瑣で衒学的な症候論に終始し、救急診療など実用をなさない」式の批判は洋の東西を問わずあるらしい、というのをある神経学の本の前書きで知った。面白いと思ったものだが、実際はどうであろうか。発表者は現在200床の小病院で神経内科臨床にたずさわっているが、当科の急性期入院で最多は脳血管障害、ついで内科的全身病態にともなう意識障害、あとに神経感染症、中毒、てんかんなどがつづく。今回症例を中心に(1)全身性血管炎と脳梗塞 (2)感染症(最近上梓された細菌性髄膜炎の診療ガイドラインもふくめて)(3)代謝性脳症(とくに薬物と蘇生後脳症)、の3つのテーマですすめたい。
一定のはやさと決断を求められる実際の地域臨床の現場で一神経内科医がどのようなことを考え惑っているのか、みていただけると幸いです。
第5回神経内科セミナー:2007.6.26.
札幌医科大学神経内科学講座 野中道夫 先生
ALSの医療において自分達になにができるか:No cure dosen't mean no hope.

ALSは,未だ有効な治療法が見いだされていない.疾患の進行に伴って生じてくる問題点の一つとして呼吸障害があるが,Totally locked in stateの問題もあり,通常の気管切開による人工呼吸器を装着する事は大きな問題点をはらんでいる.非侵襲的呼吸療法はひとつの解答となり得るが,球麻痺の問題など解決しなければならない問題は多い.
これまで,我々は,ALS患者さんが,少しでも豊かな生活が送れるように,全人的な援助をしてきた.非侵襲的人工呼吸を中心に,これまで行ってきたALS医療の概要をまとめた.
第4回神経内科セミナー:2007.5.29.
札幌医科大学神経内科学講座 久原 真 先生
ヒストン脱アセチル化酵素SIRT1の神経幹細胞における機能解析

SIRT1はHistone deacetylase (HDAC)ファミリーのtype IIIに分類され、下等生物において寿命を正に制御する分子をして知られていた。最近では哺乳類に7つの相同分子があることが同定され細胞寿命やストレス耐性のみならず細胞分化やホルモン分泌などにも生理機能を有していることが報告されている。先にSIRT1が神経幹細胞を含む未分化神経系細胞に発現していることを述べたが、今回はこれら細胞が分化していく際にSIRT1がどのように機能しているかについて調べたデータを紹介したい。SIRT1は分化の刺激が加わると細胞内局在が変化してそれによりNotchシグナルの下流にある神経分化を抑制する転写因子Hes1の転写を抑制していることを見出した。SIRT1が神経細胞分化に大きな役割を果たしていると考えられた。また将来当科で試みたい疾患をベースにした研究テーマについても論じてみたい。
第3回神経内科セミナー:2007.4.24.
国立精神・神経センター武蔵病院 神経内科 山本敏之 先生
嚥下造影検査から見た神経筋疾患の嚥下障害

嚥下造影検査は,嚥下機能を評価するのにもっとも優れた検査であると同時に,比較的簡便に行えることから,多くの施設で行われている.本セミナーでは,嚥下造影検査のビデオ画像を多く提示し,有用な情報を得るための評価ポイントについて解説する.最初に健常者の嚥下造影検査のビデオ画像から液体嚥下の古典的な4期モデルと咀嚼嚥下のprocessモデルの違いを説明し,国立精神・神経センター武蔵病院で行った嚥下造影検査から,パーキンソン病,筋強直性ジストロフィー,重症筋無力症,進行性筋ジストロフィーなど,神経筋疾患に特徴的なビデオ映像を紹介する.さらに,嚥下造影検査から誤嚥のリスクを判断するための着目点について解説する.
第2回神経内科セミナー:2007.2.27.
九州医療センター臨床研究部脳血管内科 斎藤正樹 先生
rt-PA静注療法から認知症診療へー神経内科医の役割ー

発症3時間以内のrt-PA静注療法、stroke care unitとstroke unitにおける早期リハビリとチーム医療。地域連携医療推進のための勉強会。認知症の診断と治療。リスクファクター管理を担う、かかりつけ医支援。塩酸ドネペジル、アルテプラーゼ、エダラボンの適正使用。国民病である脳卒中および認知症の医療と福祉における神経内科医の役割はきわめて重要で、若い意欲のある医師の参加が期待されます。
a,b,c:砂川市立病院脳神経センター脳卒中地域連携パス(センター長 札幌医大脳神経外科同門 高橋明先生)d:勤医協上砂川診療所での病診連携勉強会 e:e-ZISで示されたアルツハイマー病の帯状回の血流低下 f:アリセプト(塩酸ドネペジル) g:アクチバシン(アルテプラーゼ)h:グルドパ(アルテプラーゼ)i:ラジカット(エダラボン)j:左中大脳動脈の急性閉塞(心原性脳塞栓症)のMRA k:「脳血管救命センター物語」九州医療センター岡田靖先生監修(脳卒中医療を学ぶ学生には必読の書。)
第1回神経内科セミナー:2007.1.30.
札幌医科大学神経内科学講座 下濱 俊 先生
アルツハイマー病とミクログリア

アルツハイマー病の老人斑のアミロイドコアの周囲には,変性した神経突起とともに,反応性アストロサイトおよび活性化ミクログリアが観察される.これらのグリア細胞が善玉それとも悪玉として機能しているのか,その詳細は未だ不明である.このため,ベータアミロイドに起因する神経グリアの相互作用の分子病態の解明はアルツハイマー病を理解する上で大切であるとともに,新たな治療戦略の構築の上でも重要な研究課題である.


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