退任教授・役職者

退任のご挨拶

山下 利春

 私は昭和53年に札幌医科大学を卒業し, がん研究所分子生物学部門 (現フロンテイア医学研究所ゲノム医科学部門, 藤永 蕙教授, 時野隆至教授) において腫瘍ウイルス学と分子腫瘍学の研究に従事し, その後, 医学部皮膚科学講座 (神保孝一教授) において皮膚科学一般とメラノーマの研究に従事致しました。おかげ様で, がん研究所分子生物学部門で20年間, 皮膚科学講座で18年間, 計38年間の長きに渡り研究を続けることができました。平成19年には皮膚科学講座の教授職を拝命し, 皆様のご支援のもと, この3月末日をもちまして大過なく無事職務を全うすることができました。

 皮膚科ではメラニンとメラノーマの研究を中心に, 帯状疱疹の臨床研究, イミキモド外用による皮膚がん治療, ウイルス性疣贅からのHPV検出などを行って参りました。2013年7月には化粧品による白斑 (ロドデノール誘発性脱色素斑) が社会的な問題となり, 札幌医大病院皮膚科には160名以上の患者さんが受診されました。これまで化粧品による脱色素斑は経験がなく全くの手探りで治療を始めましたが, 病態に関しましては, われわれと藤田保健衛生大学の共同研究により, ロドデノール代謝産物が毒性を持つことが明らかにされ, ある程度の貢献をすることができました。皮膚科に移った直後から, アデノウイルスベクターを用いた色素性乾皮症 (XPE)の相補群診断の研究を始めました。現在の診断系でもXPEの相補群診断は困難ですが, われわれの実験系では正確に診断することができます。XP診断の論文は2016年1月にアクセプトされましたので, 研究者として清々しい気持ちで退任することができました。

 皮膚科在任中は多くの診療科の先生方のお世話になり, 皮膚がんとメラノーマに対する高度な集学的治療を行うことができました。現在, メラノーマのBRAF阻害薬, BRAF+MEK阻害薬, PD1阻害薬, CTLA-4阻害薬など, メラノーマの分子標的治療薬と細胞周期阻害薬が次々と使用できるようになり, メラノーマの黄金時代を迎えつつあります。今後の研究の展開には, これまで以上に基礎と臨床の密接な共同研究が必要となります。札幌医科大学と皮膚科学講座が永きに渡り, メラノーマ研究の中心となって発展を続けることを切に願っております。

 最後になりましたが, 札幌医科大学在職中にご支援いただきました大学執行部と教職員の皆様, これまでご指導ご鞭撻いただいた基礎医学および臨床医学部門の先生方に心から感謝申し上げまして, 退任の挨拶とさせていただきます。