平成24年度札幌医科大学卒業式並びに大学院修了式 卒業証書・学位記授与式 祝辞

 平成24年度札幌医科大学医学部卒業式ならびに大学院修了式にあたり、医学部同窓会を代表して、一言お祝いを申し上げます。

 札幌医科大学医学部60期の卒業生の皆さんと、大学院医学研究科修士・博士課程を修了された先生がた、並びにこの日を待ち望まれておられたご父兄の皆様と関係各位に、衷心よりお慶びを申し上げます。

 私どもの母校札幌医科大学は、「進取の精神と自由闊達な気風」、「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」を建学の精神とし、「最高レベルの医科大学を目指す」ことを理念に掲げ、創基以来65年を越える歴史を有し、前身の道立女子医学専門学校卒業生を加えますと、優に5,000名を超える同窓生が道内はもとより、国内外において、医療の「現場」と「先端」で活躍しています。

 今、皆さんはまさしく「医学」あるいは「医療」の現場へと翔いていくわけですが、大きな期待で胸膨らむ思いと、また一方で「大丈夫であろうか、医師としてやっていけるのであろうか」という一抹の不安も抱えていることと思います。しかし、大丈夫です。この様な素晴らしい歴史と伝統のある本学に籍を置き、今や全国でも有数の医科大学・医学部のひとつである学舎で勉学に励んできた皆さんですから、全く臆することなく大きな羽を広げて飛翔してください。そして、多くの人々から信頼される医師・研究者に成長し、医学・医療の発展に寄与されると同時に、広域医療圏を抱える北海道の医療再生のために貢献していただきたいというのが、私一人のみならず道民すべての願いであると思います。大いに期待しております。

 さて、今改めて「なぜ医師になるのか」「なぜ医師になりたいのか」と問われれば、ここにいらっしゃる皆さんは「病に苦しんでいる人のために尽くしたいという思いから」と答えると思います。「医は仁術」といいますが、かの貝原益軒は「医は相手を思いやるあたたかい心を基本とし、人を救うことを信念とすべきで、自分自身の利益を追求するものではない。であるが故に、医師は価値ある重要な職業である」というようなことを養生訓の中で述べています。皆さんもぜひこの「医は仁術」という、言い古された言葉でありまが、非常に重いこの言葉を忘れることなく、医師としての道を歩んでいただきたいと思います。

 ところで、いまやEBM(Evidence-based Medicine 根拠に基づいた医療)は医療人としては常識的な概念です。言うまでもなく、最新の臨床研究に基づいて有効性が証明された診療を行うことにより、より効果的な質の高い医療を提供しようということです。しかし、一方では、EBMだけでは立ち行かないことが実地医療の現場では多々あります。治療が困難な患者さん、高齢者のケア、終末期患者さんへの対応等々がそれに当たります。その対処法として英国の開業医から提唱されたNBM(Narrative-based medicine 物語に基づいた医療)があります。患者さんの話す「物語」から、医師はその患者さんの病気の背景や人間関係を理解し、患者さんの抱えている問題に対して全人的(身体的、精神・心理的、社会的)にアプローチしていこうという臨床手法であります。NBMとEBMは対立するものではなく、むしろ、互いに補完し合うものであると考えます。

 皆さんもぜひEBMという視点からのみ患者さんに接するのではなく、あくまでもある特定の疾患を抱えているヒトを診ているという全人的対応を忘れることがないよう、先輩として老婆心ながらお願いをする次第です。

 終わりに、卒業生の皆さんが、わが札幌医科大学医学部同窓会へこぞって入会されることを心から歓迎してお祝いの言葉とさせて頂きます。

 本日は誠におめでとうございました。



平成25年3月15日
札幌医科大学医学部同窓会
会長 田中 繁道