Department of International Exchanges/Affairs




No. 8

Winter 2000

今回の話題は、次のとおりです。


目 次


(1)Topics
コースチャ基金でサハリンの医師が来学
・『グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について』〜大学審議会答申
・『リサーチアクティビティ 1997−2000』の作成開始
(2)国際交流レポート
保健医療学部看護学科 和泉 比佐子 助手
・学生の海外派遣報告  医学部5学年 秋月 恵美 さん
            医学部2学年 平野 桃子 さん
(3)自己紹介レポート
海外技術研修員(泌尿器科学講座) 朱 生才 さん
 

 

◇◆Topics◆◇

■コースチャ基金でサハリンの医師が来学

 10年前、サハリン州から全身やけどを負ったコンスタンチン君が札幌医科大学に搬送されたのは私たちの記憶に新しいところです。この時、全国から寄せられたお見舞い金はその後ロシア極東と北海道との医療交流を目的に「公益信託北海道・ロシア極東医療交流基金(コースチャ基金)」として設立され、それ以来、サハリン州の医師が北海道を訪れ、札幌医科大学でも研修を行っています。

 今年度は、11月14日〜11月22日まで、サハリン州立病院外科ミハイル・ユーリー・イワノビッチ科長とサハリン市立小児病院外科カリンチェンコ・ゲンナージー・ワシーリエビッチ科長が札幌医科大学で研修を行いました。お二人は整形外科で様々な医療現場を見学し、専門の医師との治療方法についてのディスカッション等を行っていました。専門的なディスカッションを通して治療法についてのアイデアの交換を通し、サハリンでの治療に役立てたいということでした。両医師の所属するサハリン州立病院ではカルテはすべて手書きであるため、コンピュータによるカルテのデータ処理設備をとても評価されていました。また医大での手術見学を通して、本国との設備面の違いを感じられたようです。92年に来札した経験を持つカリンチェンコ先生は、当時と比べて札幌の街並みもずいぶん変化したとのことで、大倉山のジャンプ台博物館や北海道開拓記念館は非常に面白くまた訪れてみたいとおっしゃっていました。

◆◆また、お二人の受入に先だってコースチャ基金の運営委員として工藤隆一附属病院長がサハリン州ユジノサハリンスクを訪問しました。◆◆ 

日・ロ医学交流に関するサハリン訪問について
附属病院長 工藤 隆一

  コースチャ基金の運用のもとに行われている日・ロ医学交流を今後どの様に実施して行くべきか検討するため、竹内委員長、北海道大学医学部附属病院長藤本教授と私の3人と道の担当者、通訳の計5名で10月4日〜6日までサハリンを訪問した。ユジノサハリンスク市で州立病院、小児病院で実際の医療現場を見学すると共にコルサコフ市立病院にも行き、産婦人科に訪問した医師がどの様に活躍しているかについても会って確認した。その後、これまで北海道を同基金で訪問した方々を集め会合を行った。この会合でこの交流の成果と今後の希望を率直に聞くことができた。そして夜、懇親会が行われ、より率直な意見が述べられる会となり、それらの意見等も参考に今後の本事業がよい成果があがるように私の考えを道の事務局へ提出した。


■『グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について』
  〜大学審議会答申 

 大学の在り方を見据えていくための指針となる大学審議会答申が、平成12年11月22日に公表されました。今回の答申は『グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について』で、グローバル化と科学技術の進歩に対応しながら、国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を目指した改革が提言されています。
提言の中には、『国際的な水準を視野に入れた、大学における教育内容・方法等の一層の改善充実の方向性』や、『情報通信技術を活用した国際交流を円滑に進めるための具体的方策』、さらには『それらを実現するための大学組織運営や財政への改善充実の方向性』などが具体的に掲げられており、学生や教員の海外派遣、留学生の受入、情報通信技術を活用した遠隔授業の在り方など本学の国際交流の推進に有益な提言が数多くなされています。

『リサーチアクティビティ 1997−2000』の作成開始

 本学の研究活動内容を英文で紹介する『リサーチアクティビティ』の作成を開始しました。これは、1978年から3〜4年毎に作成しており今回が9回目となります。2001年6月の発行に向けて各講座に原稿作成をお願いしますので、ご協力をよろしくお願いいたします。なお、内容は併せてホームページでもご紹介していきたいと考えています。

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☆★国際交流レポート☆★ 

保健医療学部看護学科看護学第三講座  和泉比佐子 助手
カナダ  アルバータ大学
派遣期間 平成12年7月28日〜平成12年8月11日

はじめに

 2000年7月末より2週間、アルバータ大学看護学部(Gray学部長)に北方医学交流事業短期在外研究員として受け入れていただきました。筆者の研究テーマのヘルスプロモーション活動についてのホストであるDr. Patricia Valentineと国際看護センターのProf. Karen Millesの両氏が現地での在外研究をコーディネートしてくださいました。 

1.West Jasper Place Health Centre

 アルバータ大学のあるエドモントン市(人口は約89万人)には14ヶ所のPublic Health Centreがあり、その1つであるWest Jasper Place Health Centreを訪問しました。 West Jasper Place Health Centreの受け持ち人口は約12万人で、看護婦、歯科衛生士、事務等52名のスタッフが活動していました。母子保健、学童期の歯科保健が主な活動内容であり、家庭訪問、健康教育、健康相談等といった方法で日本における地域看護活動とかなり近いものでありました。一方、日本との違いはCentreに常勤の医師の配置はなく、予防接種は看護婦の判断と責任の基で実施されていました。また、カナダでは在院日数が短縮されており、出産した母親は産後1日目に退院となるため新生児訪問は100%実施されており、2ヶ月までは母親の希望で曜日に関わらず、何回でも保健婦が訪問するというプログラムが展開されていました。実際に出生2日目の新生児や乳房にトラブルを起こした母親等に保健婦と一緒に家庭訪問をさせていただき、在宅で地域の母親との関わりを持つことができ、対象との信頼関係の構築や看護技術の提供について学ぶことができました。

 2.Faculty of Nursing

 アルバータ大学看護学部ではCommunity Health NursingのDr. Joanne Olson、Gerontology NursingのDr. Vicki Strang、Women's HealthのDr. Katherine Mooreとそれぞれ1時間程の情報交換を行いました。また、International Institute for Qualitative MethodologyではDr. Karen Olsonから質的研究方法について、Institute for Philosophical Nursing ResearchではDr. Donna Romyn からは看護における哲学教育の重要性について、John Dosseter Health Ethics CentreではDr. Vangie Bergumから看護倫理の教授法について話を伺うことができました。更に、Centre for Health Promotion StudiesにおいてはDr. Cameron Wildからソーシャルモデルとしてのヘルスプロモーションや研究方法(質・量)および効果測定について詳しく話を聞かせていただき、今後のプリシード/プロシードモデルを活用した研究に応用できると思われました。加えて、Telehealth Technology Research InstituteでコーディネータであるMr. Reinboldからアルバータ大学と地域の協働についての説明を受け、本学部における卒後教育や地域支援の可能性を強く実感いたしました。

 上記のような様々な看護学部の教員と情報交換に加えて、研究テーマであるヘルスプロモーション活動についてのプレゼンテーションの機会をいただき、夏休み期間であるにも関わらず看護学部および医学部から約30名の方々の参加を得、緊張の中で地域住民のライフスタイルの調査について報告させていただきました。

 3.Metabolic Centre (Diabetes Education Program)

 ヘルスプロモーション活動の一環である健康教育についてはアルバータ大学病院のMetabolic CentreでのDiabetes Education Programを見学いたしました。毎月第4週に実施されるプログラムと年4回のスペシャルプログラムがあり、看護婦、栄養士、薬剤師、医師、ソーシャルワーカーとの協働で行われていました。特に教育プログラムのなかで重点的に行われていた内容はInsulin Adjustmentsであり、いかに患者自身がInsulinをコントロールできるかといったことでした。また、このプログラムは外来プログラムで、患者はホテルに滞在していますが午前7時半にはCentreで自分の朝食を選択するところから始まります。継続した4日間のプログラムの中で、患者は食事や運動はもとよりフットケアについての学習に加えてLiving Well(病気と共存しながらより質の高い生活を目指す)についての話し合いがあり、患者の主体性を尊重し態度や価値観に働きかける効果的なプログラムであると感じました。しかし、在宅ケアとの連携はなくフォローアップが課題とのことで、病院と地域の関係職種との連携が重要であると実感いたしました。

 終わりに

 今回のアルバータ大学での在外研究は今後の看護教育・研究における貴重な体験となりました。本学保健医療学部とアルバータ大学看護学部との北方医学交流事業は初めてのことであり、このような機会を与えてくださいました国際交流委員会をはじめとする諸先生ならびに本学関係者の皆様、アルバータ大学の諸先生に心より感謝申し上げます。

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 ☆★お知らせ★☆

■国際医学交流センター研修室を開放します。
・1月から国際医学交流センター1階の研修室を外国人研究者のための自習および交流スペースとして開放します。
・開放時間は月曜から金曜の午前9時から午後5時までです。
・研修室には自習用机4台、インターネットのみが利用可能なパソコン2台、ミーティングテーブル、応接セット、テレビなどを設置しています。飲食は禁止です。
・使用申請手続等は特に必要ありません。
■開学50周年記念国際シンポジウムの報告書完成
 本年6月23日、24日に開催した「北方圏医学と保健医療に関する国際シンポジウム」 の報告書(編集委員長 生理学第二講座青木藩教授)が、この程、「札幌医学雑誌特集号」として完成しました。各講座にも配布していますので是非、ご覧ください。

 


☆★国際交流レポート☆★

学生の海外派遣報告 

〜〜カルガリー大学での臨床研修レポート〜〜 

医学部5学年   秋月 恵美 さん

  この度は2000年9月16日から10月24日までの約6週間にわたってカナダのアルバータ州カルガリー大学で臨床研修をさせて頂きました。

私達が参加したのはUniversity of Calgary Faculty of Medicineの1年生のBloodcourseでした。1年生とはいえほとんどの人が理系の修士、中には博士を持っている人もおり日本の医大1年生とはわけが違います。医学の勉強をするにしてもその一つ一つの現象の科学的機序にとことんこだわります。とにかく全ての勉強が理詰めです。時間がないから丸暗記などという事は決してしません。そんな様子ですから授業の形式も私が見なれていたものとはだいぶ異なっていました。

 授業は3分の2は普通に講義室で行われる講義形式のもの、3分の1はSmall Groupという少人数性のDiscussion形式のもの、二つを中心に進められます。講義では学生が少しでも疑問を持ったらすぐに質問が教員に投げかけられます。ときにはその質問に関して教室全体で議論が交わされ授業が脱線してしまう事もありました。またSmall Groupではいくつかの症例に対してその経過・検査結果から診断名をつけ、それに対する治療や、予後について学生同士で議論を交わすという授業が行われました。そのあまりに活気ある議論には私も不慣れな英語ながら何か発言したくなり、思わず授業の予習・復習にも力が入りました。努力の甲斐もありたびたび私にも発言のチャンスもありましたが、とにかく向こうの学生はよく発言をします。うっかり黙ったままでいると自分の存在も忘れ去られてしまいそうな勢いです。待っていたのではどんどん置いていかれてしまいます。できるだけ多くの知識と能力を身につけ、それを外に出すことができないと認めてはもらえない。外国の厳しさを感じたときでもありました。

  また私達は血液学の授業だけでなく、医療面接や身体所見の取り方、医療倫理の授業にも参加させてもらいました。カナダでは臨床実技試験が国試に含まれている事もあってかこれらの授業も実によく構成されています。医療面接や身体所見の授業では実際の患者がボランティアで患者役をやってくれます。4〜5人の班に教官が1人つく徹底した少人数制です。1年生のはじめから患者とコミュニケーションをとる術を学んでいくわけです。教官は現場の医師で実際にあったエピソードなどをまじえて楽しくジョーク交じりに授業を進めてくれます。こうして1年生のはじめからいち医療者としての責任や態度を学んでいくのです。

  カナダで学んだのは医学だけではありませんでした。遊びも多いに体験してきました。私は現地の学生とできるだけ同じ生活を体験したいと思いホームステイを希望しました。ステイさせてもらったのは医大生の女の子4人(1年生と2年生が1人ずつ、3年生が2人)の暮らす、いわゆるStudent's Houseです。そこで私は彼女達のライフスタイルをとことん経験させてもらいました。それはまさによく学び、よく遊ぶというものでした。平日は勉強、週末は遊び、気分転換は運動。真っ青な秋晴れのカナダの空の下でのジョギングは実に気持ちのいいものでした。カルガリー大学はオリンピックでも使われたスケートリンクをはじめスポーツ設備が実に充実しています。私もクラスのバスケットボールチームの仲間にいれてもらい毎週スポーツを楽しみました。

 その他にもBanfftripというクラスの親睦を深める1泊2日の小旅行や、Thanksgivingdayのパーティ、クラスメイトとfootball観戦、カラオケパーティ、などなど様々なイベントにも参加することができました。

 またルームメイトの人達とは日常的な(時には冗談も交えた)会話から日本とカナダの文化や考え方の違い、医療の違い、自分達の将来についてなど大まじめな会話まで色々な話をしました。クラスメイトともはじめに「全員(約100人)と話す」と目標をたて、達成する事ができました。

 嬉しかったのはたくさんの人が日本に興味を示してくれ、私達日本人のたどたどしい英語にも嫌な顔一つせず会話を楽しんでくれた(ようにみえた)事でした。そしてカナダの人はみんな本当にいい人ばかり!!でした。 

 私にとってこの6週間は今まで自分が送ってきた5年の医学生生活を見つめなおすと共に、これからの自分を考えるためにも大変よい機会になりました。このチャンスなしでは考えなかったかもしれない事を考える事もできました。

このような貴重な経験をより多くの人がすることができるように、そしてそれをより多くの人で共有できるように、今後もこのような国際交流の場が広がっていく事を願います。最後になりましたが自分にこのような素晴らしい機会を与えて下さった本学関係者の方々、カルガリー大学の方々に改めて感謝したいと思います。


〜〜アルバータ大学での語学研修レポート〜〜

医学部2年生   平野 桃子 さん

 今年の夏休み、私は1ヶ月のアルバータ大学語学研修に参加しました。

今回の語学研修では、アルバータ大学のドミトリーに滞在しながら、主に午前中は英語の授業を受け、午後は乗馬をしたりhomevisitで一般家庭に遊びに行ったりと様々なactivityを楽しみました。

授業では簡単な医学英語や日常会話の練習をしました。買い物やレストランでの会話など、習ったその日からさっそく実際に使える環境で英語を習うのはとても楽しいものでした。また、クラス担当の先生は本当に親切であたたかく私達を迎えてくれました。誕生日の人がいるとケーキを焼いてくれたり、私達がもっと英語を話すようにと自分の友人を連れてきてくれたりと授業以外でも大いに交流することができました。

 英語の授業以外にも貴重な体験をたくさんしました。ロッキー小旅行ではカナダの大自然を満喫しましたし、現地のお祭りにもいくつか行きました。中でもカナダの建国を記念して行われた祭りでは様々な国からの移民の人々が食べ物や音楽など自分のオリジナルの国の文化を披露しており、カナダが移民の国であることが実感され、とても印象的でした。

 毎日が新鮮であっという間の4週間でしたが、日本では得難い様々な体験をし、視野が広まったように思います。またDean's awardをいただいたことも良い思い出の一つです。最後に、このような有意義な夏休みをこの語学研修で過ごせたことをうれしく思います。

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 ■平成13年度の学生派遣の概要
 13年度の学生派遣事業について、相手側大学と調整を行った結果、次のとおり実
施することとなりました。なお、今年度実施したマサチューセッツ州立大学での臨床
実習については、相手大学との調整の結果、平成13年度は見送ることとなりました
 なお、両研修とも4月中旬に詳細をお知らせし募集を開始する予定です。

  【アルバータ大学語学研修】
     平成13年7月14日(土)〜8月13日(月) 4週間
     医学部、保健医療学部、大学院の全学年25名程度
  【カルガリー大学臨床研修『血液学』】
      平成13年9月中旬〜10月中旬
      医学部5年生、6年生  4名以内

  

★☆自己紹介レポート★☆

海外技術研修員  泌尿器科学講座 朱 生才 さん

  私は朱生才と申します。1985年7月に中国同済医科大学の臨床医学部を卒業して以来、ずっと中国衛生部北京医院で仕事をしています。1993年5月から泌尿器科の講師をしております。今年の5月31日に北海道海外技術研修員として札幌にまいりました。1ヶ月の日本語研修の後、7月3日から札幌医大泌尿器科学講座で泌尿器系疾病の診断と治療について研修しております。

 今日、私達は科学技術の進歩とともに高齢化社会を迎えています。泌尿器系悪性腫瘍(腎癌、膀胱癌、前立腺癌など)は人類の健康にとって主要な危険因子であります。特に前立腺肥大症は老年男性によく見られる病気となっています。泌尿器科医としてできるだけ早期診断、早期治療をして患者さんの健康のためにいろいろ努力して行くしかありません。私はこの目的で医療技術の進んでいる日本に来たのです。この4ヶ月間で、先生がたにいろいろ教えていただきまして、本当に大変勉強になっております。特に先生がたの厳しい研究態度が一番印象的でした。

 初めて札幌に来て、見渡す限りの緑、美しい北国の自然の風物、純朴で親切な北海道の人々などと出会い、好きになりました。また、札幌は冬になると、たくさんの雪が降って、一面白銀の世界はとても風情があるそうですが、雪が大好きの私は心よりたのしみにしております。これまでの滞在期間中、生活と勉強の方面で日本の方々にいろいろお世話になりまして、心から感謝いたします。これからもどうぞよろしくお願い致します。私ももっと努力してがんばろうと思っております。

 

 


【編集後記】
 ホワイトイルミネーションが点灯しています。毎年のことですが灯ると冬の到来を実感します。これから本格的な風邪の流行シーズンです。クリスマス、年末年始と忙しい時期に入りますので、健康管理に気をつけて、厳寒の冬に備えましょう。
編集発行/札幌医科大学国際交流部
発行日 /2000年12月20日
問合せ先/札幌医科大学事務局企画課(国際・学術交流)
    〒060-8556
    札幌市中央区南1条西17丁目
    011-611-2111 (内線2166)
    e-mail koryu@sapmed.ac.jp

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