Department of International Exchanges/Affairs




No.7

Summer 2000


今回の話題は、次のとおりです。

                                          

 

 

目 次


(1)Topics
 −開学50周年記念特集−                      
 ・初夏の札幌から世界へ発信

    『北方圏医学と保健医療に関する国際シンポジウム』を開催
 ・21世紀に向けた新しい第一歩                   
     『北方圏医療の発展をめざした札幌宣言』を採択
             
(2)国際交流レポート                         
 ・整形外科学講座  山下 敏彦  助教授             
 ・医学部機器診断部 平田 健一郎 講師              

 ・医学部 6年   小野 真樹 さん            

 

 

◎●Topics●◎

−開学50周年記念特集−

 初夏の札幌から世界へ発信

    『北方圏医学と保健医療に関する国際シンポジウム』を開催 

さわやかな青空が広がる初夏の札幌。

海外の交流大学から研究者らが参集し、6月23日(金)、6月24日(土)、本学臨床講堂で開学50周年記念『北方圏医学と保健医療に関する国際シンポジウム』が開催されました。

オープニングは、アルバータ大学とカルガリー大学と札幌医科大学の3地点を通信回線で結んでのライブ中継。アルバータ大学フレイザー学長、カルガリー大学ホワイト学長が壇上のスクリーンに大きく映し出され、開学50周年とアルバータ州ー北海道姉妹提携20周年記念のお祝いと、交流の発展に向けてのメッセージが寄せられました。

『セッション1 テレヘルスコミュニケーション』では、引き続き3地域のライブにより、骨粗しょうに対する日本とカナダとの予防、治療、ケアの違いなどについてディスカッションが行われました。医学・保健医療学的な見地からの有意義な意見交換に加え、テレヘルス技術を活用した今後の教育、研究、医療分野の発展について考える大きなきっかけとなりました。

セッション2以降は、これまでの相互交流によって特に研究が深まっている分野を中心に、研究発表がなされ各国の研究者による多くの質問やディスカッションが繰り広げられました。海外からの総勢30名に加え、道内外・学内外の研究者、医療従事者、学生など2日間で延べ700人の参加を得て、有意義な2日間となりました。

  21世紀に向けた新しい第一歩

     『北方圏医療の発展をめざした札幌宣言』を採択

 国際シンポジウムに引き続き、6月24日(土)午後、『21世紀の北方圏医療の発展をめざした札幌宣言』が採択されました。採択に先駆け、参加の研究者全員により、今後の交流の必要性や重点的なテーマなどについて議論され、その結果、地域医療やプライマリーケアなどの分野での協力、今後の交流へのテレコミュニケーションの活用などを盛り込んだ『札幌宣言』の調印に至りました。

北海道の開拓の舞台、赤れんが庁舎で、厳かな雰囲気の中、秋野学長が宣言文を読み上げ、参加研究者全員の立ち会いのもと、交流大学7名の代表者による署名がなされました。調印後は、道庁赤れんが前庭で記念写真を撮り合うなど、なごやかな交流の花が咲いていました。

これまでの札幌医科大学と各大学との1対1の交流が、この機会に複数の国々のネットワークとして新たに築き上げられ、さらに堅い絆で結ばれたことになります。まさに50周年にふさわしい歴史の1ページでした。

(日本語訳)

『21世紀の北方圏医療の発展をめざした札幌宣言』

[趣旨]

 私たちは、これまで北方圏地域に住む人々の健康と福祉の向上を願い、医学・保健医療分野における技術の発展・研究充実をテーマとして交流を重ねてきた。

 この度、札幌医科大学開学50周年を記念し、これまでの交流の成果を踏まえ『北方圏医学と保健医療に関する国際シンポジウム』を北海道札幌市で開催した。

 このシンポジウムを通じて、私たちは21世紀の医療・保健医療の一層の発展に向けて共通の目標を掲げ、一つとなって努力し協力することが必要であることを確認した。

 このことから、私たちは更なる医療交流の推進と友好の絆の拡大を誓い、ここに札幌宣言を行うものである。

1 これまでの交流から生まれた知識や技術を活用し、今後とも研究、教育、診療の分野において協力しあい、その一層の発展をめざす。

2 北方圏諸国の気候・風土、生活環境における多くの共通点を明確にし、地域医療やプライマリーケアなどの分野において、より優れた医療や診療の確立をめざす。

3 テレコミュニケーションなどの新たな技術を活用し、共同研究や診療の進展を確実なものとする。

4 従来の研究者の交流に加え、学生や研究生、若手研究者、医療従事者の交流を推進し、北方圏の医学・保健医療に新しい息吹を取り入れる。

5 これらの活動を通じて得られた成果や知識、技術を北方圏諸国以外の地域に住む人々に普及し、人々の健康と福祉における世界的な水準の向上に向けて貢献する。

 

  以上のことを確認して、2000年6月24日、日本国北海道札幌市において、この宣言に署名する。 

《出来事》

◆パウロ財団パロティエ理事長に感謝状を贈呈

 6月25日(日)、開学50周年記念式典が盛大にとり行われました。その席で、これまで20年以上にわたり、フィンランドと本学との医療交流に深い理解と財政的支援を続けていただいたパウロ財団ヨルジョ パロティエ理事長に対して、秋野学長から「感謝状」が贈呈されました。パロティエ氏には初代理事長のベイコ パロティエ氏の意志を引き継ぎ、フィンランド5大学と本学との研究交流の架け橋として、多大な貢献をいただいており、これまでにフィンランドとの交流者は総勢44名にのぼっています。

 

《舞台裏》

◆歓迎イロイロ

海外からのゲストの皆さんの滞在中には、各講座の先生方がホストを務めてくださいました。短い自由時間に札幌を満喫していただくため、みなさん趣向を凝らしていたようです。「Kitaraで音楽鑑賞」、「毎晩のススキノめぐり(シンポジウムではとてもお疲れのようでした)」、「北海道はやっぱりビールとジンギスカン・・」など様々なおもてなしが聞こえてきました。皆さん、熱い歓待に感激して離道されました。

◆テレヘルスセッション

テレヘルスのセッションは、カナダとの時差や接続が3地点であることから準備も大変でした。半年以上も前からカルガリー大学、アルバータ大学と数回にわたる接続実験を行ってきましたが、当日ぎりぎりまでシナリオ変更や技術面での音声・画像のチェックがなされ、やっとOKサインが出たのがオープニング開始の2分前でした。情報センターの皆さんには本当にご尽力いただきました。

◆このほかにも、たくさんの方々に支えられていました。

総勢30名の海外からのゲストの千歳空港への到着、発着時間はまちまち。その送迎のため運転技術員の皆さんには、1日に何度も千歳空港まで走っていただきました。

また、シンポジウム開催期間中は、受付、昼食準備、控え室対応、同行者のツアー、『札幌宣言』の会場セッティングと後片づけなど、次々と行われるイベントの実施に向けてたくさんの先生方、特にゲストの対応をして下さった講座の諸先生、学生の皆さん、事務局各課の皆さんが汗を流してくださいました。見えないところでの多くの方々の協力を頂きましたこと、心からお礼申し上げます。

 

**お知らせ**

 

■国際シンポジウム、札幌宣言の記録写真を公開しています。

 焼増しの申し込みもできますので、是非ご覧ください。

期間  平成12年9月1日(金)〜9月20日(水)9時〜17時30分

場所  事務局総務課事務室内(本部棟2階)

焼増し 実費(普通サイズ1枚30円)で申込み受付中

 

■交流大学などからの贈呈品を展示しました。

 交流大学などから、開学50周年のお祝いの品をいただきました。

 当面、基礎教育棟(新棟)1階特別室に展示しましたので、機会を見て是非ご覧ください。


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◆◇国際交流レポート◇◆

 

整形外科学講座 山下 敏彦 助教授
●カナダ カルガリー大学
●派遣期間 平成11年10月24日〜平成11年11月7日

 はじめに

 1999年10月末から2週間にわたり、北方医学交流在外研究者として、カナダ、カルガリー大学を訪問しました。今回の訪問のホストはカルガリー大学整形外科教授のDr. Norman Schacharでした。Dr. Schacharは15年前に、この北方医学交流で本学整形外科を訪問されています。その際、石井教授をはじめとする本学スタッフのホスピタリティーに深く感銘させられた彼は、以来、大の親日家さらには親札幌医大派になっておられます。彼の名刺の裏には「能満釈迦(ノーマン・シャカー)」という日本名(?)が刷り込まれています。今でも少しお酒が入ると、やや調子外れの「好きですサッポロ」を口ずさみ出す陽気なDr. Schacharなのです。

 1 脊椎外科 

 Dr. Schacharは、骨・軟部腫瘍と関節外科を専門にされてます。私は脊椎外科を専門としているため、カルガリー大学の脊椎外科のスタッフを紹介して頂き、彼らと多くの時間を共にしました。同大学では、脊椎外科の診療・教育は整形外科医と脳神経外科医により構成されるSpine Programという組織によって行われていました。頚椎や腰椎の急性疾患、外傷、側弯症など多様な手術を見せていただく一方、Spine Roundというカンファランスで講演をする機会を与えていただきました。講演にはも駆け付けて頂きました。講演後のディスカッションでは、スタッフからレジデントに至る多くのドクターから容赦ない質問、意見があびせられ、いささか冷や汗ものでした。北方医学交流といっても、単なる親善としてではなく、医学、サイエンスに対してはあくまで厳しい態度で臨むべきであり、また相手方もそのような目で見ているということを痛感しました。

 2 基礎的研究

  脊椎外科医の一人Dr. Paul Saloは、臨床の他に、関節の感覚神経支配に関する基礎的研究を行っています。私も本学で、関節や脊椎の感覚受容器の研究を行っており、お互い偶然にも臨床と基礎の研究テーマが一致していることを知り意気投合しました。アメリカの多くの研究施設では、基礎的研究はPh.D.を中心とする専任研究者によって行われているのが現状ですが、カルガリー大学ではDr. Saloのように臨床にフルに携わりつつ週に1日は基礎的研究に専念できるというシステムが機能していました。同じように臨床と基礎研究の両者をこなさなければならない私たちにとっては、見習うべきところが多々あるように思われました。

 整形外科のchairmanはDr. Cy Frankで、彼はMcCaig Center for Injury and Arthritis Researchという研究組織のdirectorを兼ねています。McCaig Centerは、地元の財閥や企業の寄付により設立されたもので、それぞれの研究室には出資者である石油会社やアイスホッケー協会などの名前がつけられています。Dr. Frankは、今トレンドの遺伝子解析と関節のバイオメカニクスをcombineさせた先端的研究が高く評価されており、多くのfundを受け種々のプロジェクトを精力的に行っていました。設備面においても資金面においても、研究の環境は私たちとは比較にならないほど整っており、なんとも羨ましい限りでした。

 3 スポーツ医学

  Dr. Frankのもう一つの専門分野であるスポーツ医学についても見学することができました。スポーツ医学のクリニックは、Medical Centerから数マイル離れたカルガリー大学のメインキャンパスの体育学部内に開設されていました。そこで、学生をはじめとする一般のスポーツ障害・外傷患者の診療にあたると共に、隣接する研究施設で実際のスポーツ選手を被験者とした運動解析などの研究が行われていました。本学でも、このような臨床と直結したスポーツ医学の研究システムづくりが必要であると感じました。

 4 テレヘルス・コミュニケーション

 私のカルガリー大学訪問のもう一つの目的は、本年6月の開学50周年記念国際シンポジウムの冒頭で行われたテレヘルス・コミュニケーションの事前打ち合わせをすることでした。カルガリー大学には、Health Telematics Unitというテレヘルス専門の部門があります。そのheadのDr. Penny JennettとDr. Schacharを加えた3人でテレヘルス・コミュニケーションのアウトラインを話し合いました。都市間の距離が離れているカナダでは、テレヘルス・コミュニケーションはすでにごく日常的なものとなっているようです。ふと覗いたカンファランスルームで、学生がモニターを前にエドモントンの学生とごく普通に討論しているのを見て大変感心しました。ともあれ、50周年記念シンポジウムの本番では、カナダと結んだテレヘルス・コミュニケーションを首尾良く終えることができホッとしています。 

終わりに 

 前半の1週間は、緊張感と時差ボケによる眠気が入り交じり、なかなかタフな日々を過ごしましたが、後半の1週間は少し余裕もでき、レンタカーで定番の観光地バンフや世界有数の恐竜博物館のあるドラムヘラーなどへ足をのばすこともできました。最終日近くには、Dr. Schacharとともに副学長のDr. van de Sandeのもとに在外研究終了の報告に赴きました。Dr. van de Sandeより、今後も両大学間の交流を深めていきたいとのお言葉と記念のgold medalを頂き感激もひとしおでした。

 最後に、このような貴重な経験の機会を与えて頂きました国際交流委員会をはじめとする本学関係者の方々、カルガリー大学の諸先生方に心より感謝申し上げます。

  

機器診断部 平田健一郎 講師
●アメリカ  マサチューセッツ州立大学
●派遣期間  平成11年11月15日〜平成11年12月23日

 1999年11月15日から12月23日までの6週間、マサチューセッツ州立大学医学部の外科と放射線科で研修して参りました。後半の3週間を放射線科の超音波診断部門で研修しましたので、現地の超音波診断部門の様子を簡単にご報告いたします。

 超音波検査室はすべて個室になっており、札幌医大の超音波室の4割程度の広さの検査室が6部屋あります。各部屋にはATL社のHDI3000という大型の超音波診断装置が設置されていました。7人のsonographerが勤務していましたが、男性はたったの1名でした。検査は基本的にsonographerが一人で行っています。放射線科では心臓以外のすべての超音波検査を実施しています。心臓の超音波検査はCardiologyの部門で、超音波内視鏡検査は内視鏡部門で行われていました。

 腹部領域の検査オーダーで多かったのは、移植前後の腎臓や肝臓のドプラを用いた血液の評価でした。日本でよくオーダーされる早期癌や微小病変を発見するためのスクリーニング検査は多くありませんでした。検査時間は検査内容により、30、45、60、90分の4段階に設定されています。1日に40数名の検査を行っていますから、装置一台あたりの検査人数は一日7人前後であり、sonographerは余裕をもって検査を施行していました。検査開始時刻は通常8:00amですが、早いときには7:00頃にスタートします。終了時刻は4:00〜5:30前後でした。sonographerは自分の受け持ちの検査が終わり次第帰宅するようです。

 検査室にはラジオカセットレコーダーが置いてあり、各sonographerの好みの音楽がかけられていました。BGMの流れる中で、患者は静かに技師の指示に従って吸気位あるいは呼気位での息止めを繰り返していました。

 検査終了後、現像されたフィルムをradiologistの待機している読影に持っていき、radiologistと結果についてdiscussionをします。radiologistが納得すれば検査はそれで終了になりますが、問題点がある場合には、最終結論に達するまでsonographerが再度、追加の検査を行います。読影室では各検査室の超音波診断装置のモニターを観察可能で、再検の場合にはその検査室のモニターを読影室で見ながら指示を出します。radiologistが自ら検査室に赴きプローブを持つことはほとんどありませんでした。

 レポートはradiologistがカセットレコーダーに音声で記録したものを専門のタイピストがコンピュータ入力を行っていました。翌日にはコンピュータ入力が終了していました。

 超音波ガイド下の生検はradiologistが施行します。乳腺の吸引細胞診はradiologistが超音波で針先を確認しながら、フリーハンドで針を進める方法で実施していました。移植腎(腎機能低下症例)の生検はsonographerが超音波で生検部位の深さと方向を示した後に、radiologistが18Gか16Gの生検針をblindで進める方法で実施していました。前立腺の生検は経直腸プローブガイド下に経直腸的に行いますが、sonographerがプローブを把持し生検部位を超音波像に示し、radiologistが超音波像を見ながら、針を進めて生検を行っていました。麻酔なしの生検です。さすがに、患者は生検の度に唸っていました。生検施行前に抗生物質を1錠服用させ、さらに2錠を自宅で服用するように指示していました。基本的に生検で入院することはないようです。肝腫瘍の生検もガイドはsonographerが行い、穿刺はradiologistが行っていました。生検を施行する場合、その場に病理の技師が必ず立ち合い、検体採取後の処置をその場で行っていました。

 以上、簡単に超音波診断部門での検査の状況についてご報告しました。超音波検査室の本来のあるべき姿を見てきたように思います。設備やスタッフの数では足下にも及びませんが、せめて診断能では負けないようにしたいものです。


医学部6年 小野 真樹さん
●マサチューセッツ州立大学での臨床実習
●平成12年4月〜5月
 

この度は、アメリカの医学部で臨床の研修をさせて頂くという、貴重でスリリングな体験をさせていただきました。現地では、サブインターンシップの「選択科目」を、一ヶ月単位で2つ選択しました。3人の学生がこのプログラムに参加し、それぞれに有意義な研修成果があったようです。 

私の場合は、はじめに"Family Medicine"を、次に"Emergency Medicine"を、それぞれ履修しました。本来サブインターンシップというものは、学生ではあっても半分はドクターとして、ある程度の責任を持って患者さんを診察することが期待されています。しかしながら、外国人であり、また日本でもほとんど患者さんを診察したことがなかった私は、レジデントの診察を見学したり、アメリカの医療のシステムを勉強したりすることから始めようと思いました。"Family Medicine" というのは、日本ではまだ一般的になっていない医療のシステムなので、見学することもそれなりには興味の深いことでした。しかし、現地の3年生は、当たり前のように毎日ひとりで外来の患者さんを診察します。自分でアセスメントを下すこともあるし、プレゼンテーションもしていました。そういう姿を見いると、だんだんとただ見学していることが物足りないと感じるようになってきました。アメリカの学生は最初の二年の間に、患者さんを前にしてどのように問題点を明らかにし、解決していくかというプロセスを、はっきりと意識しながら医学の知識も身につけてきています。だから自分としても、まずはそのようなことを意識しながら診察を見学したり、ディスカションに参加しようと考えました。そのうちに、彼らが "H&P" と言っているもの(つまり History & Physical Exam) を、きっと最初に理解するのが良いのではないかと思うようになったのです。 

そして一ヶ月がすぎ、英語でする "H&P" の流れにもようやく慣れてきたきたころ、二ヶ月目の "Emergency Medicine" が始まりました。そこではいきなり、H&P はおろか、検査のオーダーや投薬の処方までやっても良いと言われたので、これにはさすがにびっくりしました。とりあえずはやれることしかできないので、レジデントが診た患者さんに、後からもう一度 H&P をとらせてもらう、という練習をはじめました。患者さんには色々な人がいて、快く診察に協力してくれる人もいれば、そうでない人もたくさんいました。また、言葉の言い回しの問題で、正確な病歴をとれなかったこともありました。そういうときは、もっと英語ができたらと痛感したものです。それでも、アメリカで自分には失うものが何もないと思っていたので、出来る限りのことはしてみようと思いました。H&Pをとったらアテンディングにプレゼンテーションもさせてもらったし、時に軽傷の患者さんに対しては、投薬から退院の手続きまで、全部自分でさせてもらったこともあります。 

そのように色々とやっていると、きちんと順序を踏んで努力すれば、初めは不可能に思えたことにも、それなりに立ち向かうことは出来るという、自信が生まれてきたような気がします。日本で経験したことのない臨床行為を、外国語でするという厳しい環境が、今となってはむしろ自分の力を引き出してくれたのではないかと感じています。反面、日本での現状の医療や医学教育のシステムに矛盾を感じるような気持ちが強くなり、今後解決して行かなくてはいけない課題だと思いました。

 さて、アメリカで勉強したことのほとんどは H&P についてだったのですが、医者の医者たる所以は、H&Pにとどまらず、判断や処置をする事が出来る点であるような気が、今はしています。だから今後はそのような目標をもって、もっと勉強していこうと考えています。また、自分はこのように、アメリカで貴重な体験をさせて頂いたのですが、今後も多くの学生が、国内外に限らずもっと外部の色々な世界で色々な現場を体験し、しかもその体験を共有してゆくことが出来るような雰囲気が生まれてくればいいと思っています。そして私たちの経験がそのための第一歩となることが出来たとしたら、それはこの上ない幸せではないかと感じています。最後になりますが、このような機会を与えて下さった国際交流部のみなさま並びに関係者のみなさまに改めて感謝したいと思います。

 

**お知らせ**

 ◎国際交流活動報告会が開催される

   平成11年度北方医学交流の派遣研究者による現地での活動報告会が7月14日、新棟5階で開催されました。今回の発表者は7名で、それぞれ、派遣大学での研究成果や人的ネットワークの広がりなどについて、スライドを交えながら発表を行いました。また、引き続き、臨床研究棟地下1階食堂で、本学で研究中の外国人研究者の方々を交えて、交流会を開催しました。外国人研究者同士が交わる機会も少ないことから、皆さん、様々な情報交換を通じて楽しいひとときを過ごしていました。

 

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☆★学生の海外研修★☆

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◎アルバータ大学語学研修、今年は16名が参加

 昨年から始まった学生の派遣研修。今年のアルバータ大学語学研修は、7月16日から8月15日までの4週間、行われました。今年は医学部5名、保健医療学部11名の合計16名の参加がありました。昨年と同様、午前中4時間の集中的な英語の授業と、午後の様々なカナダの生活や文化に触れるアクティビティを通じて、生の英語と生活に触れ、感動もひとしおのようでした。 

◎カルガリー大学臨床研修の参加者4名決定。9月16日(土)に出発します。

 カルガリー大学での臨床研修は、今年も9月20日〜10月23日、「血液学」のコースで実施されます。今年も5年生、6年生の応募者の中から、面接による選考を行い、4名が選ばれました。カナダでは、学生は予めテキストの予習を行い内容を理解した上で授業に参加し、授業中はディスカッション中心に進めるようですので、4名は夏休み返上でテキストの予習を行っていたようです。

  

【編集後記】
 厳しい暑さもやっと峠を越え、秋の気配が日に日に増してきています。
今年の初夏はあわただしくも、何とか成功裡に「国際シンポジウム」を終わることができ、事務局一同ホッとするとともに、様々な面でご協力いただいた関係各位の皆さんに大変感謝しています。どうも有り難うございました。
 これから、絶好の行楽シーズンの到来です。収穫の季節、心おきなく楽しみましょう。
編集発行/札幌医科大学国際交流部
発行日 /2000年9月6日
問合せ先/札幌医科大学事務局企画課(国際・学術交流)
   〒060-8556
   札幌市中央区南1条西17丁目
    011-611-2111(内線2166)
   e-mail koryu@sapmed.ac..jp

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