Department of International Exchanges/Affairs




No.10

AUTUMN 2001



今回の話題は次のとおりです。 

 

目 次


(1)
Topics
アルバータ大学・カルガリー大学への学生派遣
(2)国際交流レポート
耳鼻咽喉科学講座 白崎 英明 講師
内科学第三講座 田中 裕士 講師
神経内科 今井 富裕 講師
(3)自己紹介レポート
海外技術研修員(公衆衛生学講座) 尚 爾華さん
海外技術研修員(口腔外科学講座) 劉 聡さん



◇◆Topics◆◇

アルバータ大学語学研修に18名が参加

去る7月14日から8月13日まで、アルバータ大学で語学研修に参加した、1年生から4年生の学生18名が元気に帰国しました。学生によるレポートは次号掲載の予定ですが帰途に記入していただいたアンケートから、次のような感想を読みとることができました。

○語学研修について

語学研修は月曜〜金曜の毎朝8時から12時まで行われました。
〜アンケートより〜 「内容は充実していて実践的」、「ディベートに参加して会話も意識も向上した」、「カナダの文化や生活の話題を取り入れ、飽きないよう工夫されている」、「会話力がついた」など、自身の英語力向上を実感しているようです。講師についても、「学生の希望を取り入れてくれた」「親切でユーモアがあり、様々な提案をしてよりよい研修になるよう配慮してくれた」など、好評でした。

○アクティビティについて

プログラムでは語学研修以外にも様々な課外活動が用意されており、貴重な体験をすることができます。
〜アンケートより〜 「初めての経験ばかりで楽しかった。」「カナダの大自然に感動した」との声が大半で、特に有意義だったのは2泊3日で行ったカナディアンロッキーツアー、ホームビジットなどでした。また、「初対面の18名が協力しあえたことがすばらしかった」との声もありました。今年エドモントンにおいて開催された世界陸上の観戦も楽しい思い出となりました。

〜来年度に向けて〜
それぞれ実り多い研修となりましたが、来年以降の改善点として、「他国の学生との混合クラスの方が日本語に頼らなくなるのでよい」、「ホームビジットの受入先の質を向上させてほしい」、などの要望が出されました。これらの意見を来年度の計画に活かしていきたいと思います。 

カルガリー大学臨床研修に3名が出発

カルガリー大学臨床研修は今年も5年生、6年生から募集し、応募者について選考試験を行い、5年生の3名が選ばれました。9月11日に発生したテロ事件の影響で、当初の予定より8日遅れの9月23日に札幌を出発しました。10月22日まで、「血液学」コースの実習に現地の学生と共に取り組みます。 


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○●国際交流レポート●○
 

医学部耳鼻咽喉科学講座 講師 白崎 英明
◆派遣先:タンペレ大学(フィンランド)
◆派遣期間:2001年3月11日〜4月2日

北方医学交流事業の在外研究者として、フィンランドのタンペレ大学耳鼻咽喉科に3週間滞在し、以下のような臨床医学・基礎医学に関する交流活動を行いました。昨年当科に1ヶ月にわたり滞在しておりましたタンペレ大学耳鼻咽喉科Markus Rautiainen助教授にホストとしてコーディネートして頂きました。

1.講演

3月14日にタンペレ大学病院にて ”Role of cysteinyl leukotriene on allergic rhinitis”というタイトルで約60分間の講演を行いました。日本では2000年1月よりcysteinyl leukotrieneの受容体拮抗薬がアレルギー性鼻炎に対し認可されておりますが、北欧ではまだ認可されていない為、どのような症状に効果が高いか?等の多くの質問を受けました。

2.タンペレ大学病院耳鼻咽喉科外来、病棟見学

数日間にわたってタンペレ大学病院耳鼻咽喉科を見学しましたが、数多くのカルチャーショックを受けました。耳鼻咽喉科のベッド数は35と本学よりも少なかったですが、年間手術症例は耳鼻咽喉科だけで2000例以上であり、そのうち外来手術が800例でありました。驚くことに、全身麻酔下の扁桃摘出術、アデノイド切除術、副鼻腔内視鏡手術などの日本では通常1週間は入院を要する手術が外来手術扱いで、これらが外来手術の大半を占めておりました。術後の在院日数も短く、術後感染がほとんど無いため術後の予防的な抗生剤投与も大侵襲の手術以外は通常行わないとの事でありました。さらに、昨年のMRSA感染症は2例のみであり院内感染もまったく問題になっていないようです。このような抗生剤の使用方法は北欧独特であり、見習うべき点も多いと思われました。 帰国後、以上のようなフィンランドと日本との相違点をもとに、日本における耳鼻咽喉科医療についての現状と問題点を振り返ってみましたが、今後は日本においても適応を充分検討したうえで外来手術をもっと積極的に取りいれたほうが良いと考えました。一方、抗生剤の使用法については、すでに日本と北欧の間で病院院内の細菌分布に著しい差が存在すると思われるため、易感染性患者が多い現状では、北欧と同じ使用法は難しいと思われます。今後も重要な検討課題であると思われました。

3.基礎研究について

ヒト鼻粘膜培養上皮細胞の繊毛機能の研究を始めたタンペレ大学耳鼻咽喉科大学院生Dr J Haatajaと約2週間にわたり共同研究を行いました。札幌医大耳鼻科ではすでにヒト鼻粘膜培養上皮細胞の実験系は確立していたため、培養方法などの違いを議論しました。また、透過型電子顕微鏡による観察も行いましたが、これについて、私は使用経験が無かった為、機械の操作法などの多くの事を教わりました。期間が短い為、新たな知見となるような結果は出せませんでしたが、非常に有意義なものでありました。冗談かもしれませんが、投稿論文の共著者に入れてくれると言っておりましたので、少し楽しみです。

4.フィンランドでの生活について

北欧生活を経験された方は、めったにいらっしゃらないと思われますので、フィンランドでの生活を簡単にご紹介いたします。私は10年前に2年間のロンドン留学経験がありましたが、今回の異国の地での自炊生活に多少は不安がありました。宿舎は病院の敷地にあります1DKのフラットでありました。フィンランドは温水によるセントラルヒーティングが非常に発達しており、タンペレ市におきましても市中心部に熱供給公社があります。外気温が氷点下20度の日でも、私のフラットは常にセーターがいらないくらい快適でした。ちなみに、部屋の湿度が非常に低いため家ダニの発生がなく、ハウスダスト・ダニが抗原の通年性鼻アレルギーの患者さんはいないようです。私の食生活については、朝の食事はライ麦パン、昼は病院の食堂、夜は宴会の無い日は自炊というパターンでした。スーパーマーケットには日本と同様に物があふれておりましたが、狂牛病と口蹄疫の影響か誰も牛肉は買っておらず、私も鶏肉と卵と魚(サーモン)ばかり食べておりました。レストランでは生まれてはじめてトナカイの肉を食べましたが、やや硬い以外は普通の牛肉とあまり変わりなくヘルシーな印象です。物価も日本と同じレベルで、おいしい日本食が食べられない以外は、さほど苦労はしませんでした。

5.フィンランド人とサウナについて

フィンランド人のサウナ好きは有名で、第二次世界大戦中でも最前線でさえ、サウナ(テントで囲った移動式サウナ)に入っていたようです。従いまして、普通はどの家も、たとえワンルームマンションでさえサウナがあります。私も数人のDrの家に呼ばれてサウナに入りましたが、なかには寝泊りできるくらいの立派なサウナ室もあり驚きました。また、冬期はサウナで暖まった後に氷に穴を開けた湖に飛び込む冗談のようなice hole swimmingが有名です。私もトライいたしましたが、氷水中では激しい皮膚の痛みのために5〜6秒間しかもちません。しかしながら、熱さと皮膚の痛みの妙なここちよさが好きになり、結局2時間近くice hole swimmingをエンジョイしておりました。おすすめです。

6.おわりに

本学の北方圏医学交流事業において、アメリカ・カナダと比較して北欧は希望者が少ないと聞いております。これはおそらく北欧での生活が独特であり、アメリカ文化が浸透している日本人ドクターにとって容易になじめないのではないかという不安のためではないでしょうか。しかしながら実際に行ってみますと、前述しましたように臨床医学の面でも参考になる点は数多く、北欧での生活も慣れてしまえば楽しいものと思われます。この3週間の滞在でフィンランドが好きになり、帰国後すぐに北海道フィンランド協会に入会したのは、言うまでもありません。最後にこのような貴重な機会を与えて頂きました国際交流委員会をはじめとする諸先生方と関係者の方々、タンペレ大学耳鼻咽喉科の諸先生方に心から感謝を申し上げます。

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医学部内科学第三講座 講師 田中 裕士
◆派遣先:カルガリー大学
◆派遣期間:2001年3月12日〜4月18日

今回の派遣研究の目的は、カルガリー大学医学部内科のR.L.Cowie教授(呼吸器内科専門)の指導下で、カナダにおける気管支喘息の臨床、研究の両面について交流を行うことでした。医学部附属病院である約1000床のFoothills Hospitalと隣接する研究棟において、喘息および結核の専門外来、病棟診療でconsultationと、連日residentと共に患者と接し治療について意見交換をおこないました。まず最初に、日本とカナダにおける喘息患者の実態の違いについて、われわれの約3000名の患者のデーターと比較しようと試みたのですが、カナダとの医療システムの違いによって阻まれました。つまり、多くの患者はクリニックに行かず薬局で薬を買い、医師の定期的な診察は受けておらず、更に患者の多くは呼吸器専門でないfamily doctorによってfollowされており、大学病院ではfamily doctorが一方的に判断し紹介した少数の重症患者のみを診察するシステムでした。一方、residentに聞いたところ卒業生の30%位はfamily medicine志望ということでした。Cowie教授とのdiscussionの結果、成人の喘息有病率は約4%で日本よりやや多く、アルバータ州の気候は札幌よりも湿度が低く、家庭内でのハウスダスト、ダニやカビの発生が少ない反面、猫などのペット飼育率が50%であり(北海道のデーターでは25%)さらにそのペットがアレルギーの原因と断定されても決して手離すことはなく、飼育を継続する患者がほとんどであることが判明しました。すなわちカナダでは喘息患者教育が重要で、大学ではnurse clinicianという資格をもつ専門的な看護婦が、患者が来院するたび一人約20分をかけ、その時間内にβ2-刺激薬を用いた肺機能改善率、喘息吸入薬の吸入方法のチェック、喘息患者教育を行っており、そのデーター共に医師が診察し、一通り患者に説明するのですが多くの場合細部まで理解できず、医師の診察後さらにnurse clinicianが説明するという念の入れようでした。また、喘息発作の対応も日本とは異なっており、喘息発作の場合、症状による自宅での処置が書いてあるaction planにそって自己治療することは日本と同じでしたが、自己判断でプレドニンを50mg/日を1週間内服し(カナダには1錠50mgの錠剤がある)、改善しなければすぐERに受診し、日本の病院のように外来で点滴、吸入する光景はありませんでした。カナダでは、ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の合剤の吸入薬が既に広く普及しており(残念ながら本邦では承認の予定はない)その反面β2刺激薬のテープはなく今回紹介しました。また、カルガリーから車で2時間のところのhutterite共同生活のコロニーにおける喘息アレルギーの検診隊にも参加させていただき、地元の人でもなかなか入る機会のない閉鎖社会での貴重な経験をしました。研究面では呼吸器病理学のFrancis Green教授と気管支喘息気道のリモデリングについて、また滞在中に昨年度の国際交流で当教室小場助教授が訪れたアルバータ大学のPaul Man先生にもcontactがとれ、誘発喀痰をもちいた気道炎症についてわれわれのデーターと意見交換をおこないました。私がカルガリーに滞在中の36日間すべて数十年ぶりのtransit strikingで全く公共交通が利用できず、週末はほとんど大学の図書館で過ごすことになりました。Cowie教授から、カルガリーの最悪の時期の訪問であったと言われましたが、Tay Jadavji小児科教授の御自宅へ招待されたこと、Cowie教授夫妻の車でDrumhellerのRoyal tyrrell恐竜博物館に訪れたことや、アルバータ大学のPeter & Setsuko Olley教授夫妻の御好意でロッキー山脈にあるCanmoreの別荘に泊まり、ナキスカやサンシャインスキー場でパウダースノーを経験でき、楽しい思い出となりました。

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医学部附属病院神経内科 講師 今井 富裕
◆派遣先:マサチューセッツ州立大学
◆派遣期間:2001年3月18日〜4月1日

今井講師は交流レポートとして素敵なフォトエッセイをお寄せくださいました。











これがマサチューセッツ州立大学医学部の全景です














2週間の滞在のほとんどを過ごした電気診断センターの入り口













私を大変暖かく迎えてくれたProf.Chad(左)と電気診断学のスタッフのひとりDr.Sargent(右)














Dr.Fontneau(右端)の針筋電図検査を見学したときのスナップです













臨床神経生理学のfellow(Dr.Salvaraji、右)がresident(Dr.Sanchez、左)と神経伝導検査の結果について議論しています。いわゆる卒後教育の一環と言えます。












Dr.Paydarfarの研究室では、ヒトの嚥下運動に連動した呼吸リズムの変化に関する研究に参加しました。X線撮影をするので予防衣を着ています。














検査機器は札幌医大神経内科と全く同機種でしたが、10部屋に各1台設置されていました(当科は1台のみ)。













ここはUMASS memorial medical centerの睡眠無呼吸の研究室です。Dr.Salvaraj と長時間モニターされた睡脳波を解析しました。

2週間という短い滞在でしたが、専門の臨床神経生理以外にも、Neurologyの外来病棟診療への参加や学生の臨床実習の見学、あるいは関連病院の訪問など大変密度の濃い研修でした。

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☆★自己紹介レポート★☆


海外技術研修員 尚 爾華 さん (医学部公衆衛生学講座)


私は2001年6月1日に中国のハルビンから参りました、尚爾華と申します。中国でハルビン医科大学の公衆衛生学部を卒業しました。来る前には黒龍江省衛生防疫所の食品衛生課に勤めておりました。今回北海道海外技術研修員として札幌医科大学へ来て、癌の予防医学の研修ができたことは、とても珍しいチャンスだと思います。
現在は公衆衛生学講座で森先生をはじめ、各先生方からいろいろ教えていただきました。先生方はみんな親切ですし、日本語がまだまだの私に、緊張しないようにいろいろお世話になっております。こちらで、進んだ技術を学び、以前よりもっと深く、綿密な研究をして、本当に大変勉強になっております。心から、誠にどうもありがとうございます。
今度札幌に来て、もう5ヶ月になりました。だんだん慣れました。札幌市はとてもきれいな町です。建物も道も素敵で、空気もすがすがしい、気持ちがとても楽になります。この間、たくさんの日本人の友達もできました。北海道のあちこちに連れて行ってくれて、有珠山にも小樽にも行って、楽しい思い出になりました。北海道はたいへんいいところと強く感じました。

来年の3月まで、どのような成績を取りたいかと自分は考えていて、ぜひ精一杯努力すべきだと思います。一生懸命に頑張ります。

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海外技術研修員 劉 聡 さん (医学部口腔外科学講座)

私は劉聡と申します。中国の北京から参りました。1994年7月に首都医科大学歯学部を卒業してから、ずっと中国衛生部北京病院の歯科で仕事をしております。今年の6月1日に北海道海外技術研修員として札幌に来ました。1ヶ月の日本語勉強の後、7月2日から札幌医大の口腔外科学講座で研修しております。この間、高い水準の口腔疾患の治療技術を見られたことがとてもうれしいです。特に先生方の厳しい研究態度が一番印象的でした。私は札幌へ来たのは初めてです。最初、札幌で道によく迷ってしまったのですが、道を尋ねると、すごく親切に教えていただきました。札幌市民はとても礼儀正しく、友好的だと思います。それに、私は日本の高層ビルや現代文明よりも、札幌の自然の風景の方が大好きです。
私は北京生まれです。北京は中国の首都です。2000年ぐらいの歴史があります。古都北京も大きく変わりました。市内建設も着々と進み、新しい建物が雨後の竹の子のように増え、陸橋が網の目のように多くなったので、交通がずっと便利になってきました。町の中は緑に包まれ草花が多く、空気がきれいになって、環境が以前よりずっとよくなりました。2008年のオリンピックが北京で開かれることになりました。北京市は以前よりもっと良くなるに違いありません。中国の国民が首を長くしてその日を待っています。ぜひ北京へいらっしゃってください。
今後ともお世話になります。これからどうぞよろしくお願い致します。私ももっと努力して頑張りたいと思っております。

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♪♪お知らせ♪♪

桃総ロ交流活動報告会を開催しました
去る6月29日、国際交流センター1階で、昨年北方医学交流事業でフィンランド、カナダ、中国、米国に派遣された研究者の報告が行われました。スライドやプロジェクター等を使用し、各派遣先の状況、研究の成果、人的ネットワークの広がりなどについて説明してくださいました。 

刀uリサーチアクティビティ」配布中
本学の研究概要を英文で紹介した、国際交流委員会発行の「Research Activities of Sapporo Medical University 1997-2000」(A4版・152ページ)をご希望の方に差し上げます。


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 【編集後記】

発行が遅れるうちに秋も深まり、カルガリー大学臨床研修から学生が帰学したり、オーストラリアから短期留学生が来学したり、様々なことがありました。その様子は次号でご紹介いたします。

 

編集発行/札幌医科大学国際交流部
発行月日/2001年10月29日
問合せ先/札幌医科大学事務局企画課<国際/学術交流>
〒060-8556
札幌市中央区南1条西17丁目
Tel:011-611-2111(内線2166)
E-mail: koryu@sapmed.ac.jp

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