学長式辞

 
 
平成16年度入学式式辞


                                    札幌医科大学長 今 井 浩 三
 

 本日ここに、平成16年度札幌医科大学医学部及び保健医療学部、並びに札幌医科大学大学院医学研究科及び大学院保健医療学研究科の入学式を挙行するにあたり、大学を代表して、式辞を申し上げます。

 また本日の入学式に、ご多忙のところ、ご出席いただきました北海道副知事 吉澤慶信様、北海道議会議長 神戸典臣様、札幌医科大学後援会長 佐藤研介様をはじめ、ご来賓の皆様に、厚く御礼申し上げます。
 
 ただいま、札幌医科大学へ入学を許可されました諸君は、医学部100名、保健医療学部103名、並びに大学院医学研究科42名、大学院保健医療学研究科修士課程18名、博士課程6名であります。諸君の入学をお祝いし、大学をあげて諸君を歓迎いたします。今日の慶びにいたる過程を支え、励まし、導いてこられたご家族の皆様のお慶びもいかばかりかと存じます。こころからお祝い申し上げます。

 さて、諸君は、医師あるいは看護師、理学療法士、作業療法士を目指して本学へ入学し、喜びと期待で、夢は大きく拡がっていると思います。新入生を迎えるにあたり、まず、最初に、諸君がこれから学生生活を送る札幌医科大学の歴史と建学の精神、そして現状について、その概要を申し上げたいと思います。

 札幌医科大学は、昭和25年、1950年に、道民の強い要望により、北海道立の医科大学として、創立されて以来、半世紀の歴史をもつ大学であります。大学創設時における学長の大野精七先生は、北海道の地域医療に貢献する医師を育成し、かつ国際的にも活躍できる医師、医学研究者の育成を理想に掲げ、時代に先駆けて、胸部外科、脳神経外科、麻酔科を設立するなど、アメリカ医学を積極的に導入した新機軸の医科大学を造り上げたのであります。

 この創立時の高い理想を引き継ぎ、爾来、札幌医科大学は新しい医学を積極的に取り入れる進取の気風に富み、特色ある教育、国際的に高い評価を受ける最先端の研究、そして高度な専門医療の実績を積み重ねながら、北海道における地域の医療と保健医療に貢献する医療人を多数育成してきたのであります。

 すなわち、ここにございます「進取の精神と自由闊達な気風」「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」という本学の建学の精神であり、本学の校風となって、教職員と学生の精神的支柱になっているのであります。

 大学の創設当時は、医学部のみの単科大学でしたが、高齢化社会の進展に伴う保健・医療・福祉の連携を担う人材の育成という社会の要請にこたえて、昭和58年に、看護学科、理学療法学科、作業療法学科をもつ衛生短期大学部が併設され、平成5年には、これを母体に保健医療学部が設置されて、本学は医学部、保健医療学部を擁する医学系の総合大学に発展しております。
 
 さらに、本学では、道民に高度の医療を提供し、地域の医療、保健医療の質を高めるために、大学院の充実を進めております。昭和32年に、大学院医学研究科が設置され、学位審査権を得て以来、今日まで、2,200名を越える医学博士を輩出してまいりましたが、一層の専門的知識・能力が要請される21世紀の新しい時代に対応するために、4年前に、大学院医学研究科の間口を拡げて、再編・整備し、最先端医学研究を担う研究者の育成と、高度医療専門職業人の育成を目指す新大学院がスタートしております。

 また、大学院保健医療学研究科には、平成8年に看護学、理学療法・作業療法学専攻の修士課程が設置され、平成10年には、全国の大学に先駆けて、理学療法・作業療法専攻の博士課程が設置されて、我が国の保健医療学領域における先導的な立場にあります。

 札幌市の市街地にある本学のキャンパスは、都市型大学として、近年、高度に整備されてまいりました。附属病院に来られる患者さんには、来院しやすく、地の便があり、また公開講座などに気軽に足を運べる、開かれた大学となっています。

 最新の設備をもつ基礎医学研究棟には、土、日を含め、夜の12時まで使用できる図書館と情報センター、および遺伝子工学などの最先端研究設備をもつ教育研究機器センターがあります。また、学生諸君の自学自習のための演習室を30室程つくり、さらに、交流会館には、サークル活動の部室を設置しています。1昨年には開学50周年を記念して新しく「札幌医科大学記念ホール」が完成いたしております。

 本学は、国際交流にも積極的に取り組んでおります。学生諸君のためには、アルバータ大学への語学研修、カルガリー大学への臨床医学研修が用意されています。 このように、学生諸君の勉学のために、十分な環境が整っておりますので、本学において大きく飛躍してほしいと思います。

 さて、申すまでもありませんが、本学は北海道立の公立大学であり、諸君への道民の期待は非常に大きいのであります。本学の卒業生が北海道の各地で、地域の医療や保健活動に貢献してきた実績、および本学がこれまで果たしてきた医療人育成や研究成果、そして高度専門医療の提供などによって、札幌医科大学は、高い評価と信用をうるにいたっております。それだけに、この札幌医科大学を選んで入学してきた新入生諸君には、札幌医科大学の建学の精神の継承者として、新しい医学と医療、そして道民の健康を守る旗手として、21世紀に大きく羽ばたくことが期待されているのであります。

 大学院へ進学した諸君の勉学は、諸君自身の力で、創造的、独創的な道を切り開いていく高いレベルのそれであります。

 1984年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞した英国ケンブリッジのセザール・ミルシュタイン博士は、札幌医科大学で学生に講義をした際に、「どうすればノーベル賞をとるような研究ができるのですか?」という学生の問に対して「それは正しい疑問を持つことである」と答えておられました。あらゆる情報を集約して、正しい質問をすることにより、自然は創造的で美しい答を用意している、ということであります。
諸君はこの大学で、誰もなしとげていない研究をなしとげ、この札幌の地から世界へ発信するノーベル賞級の成果を生み出してほしいと思います。
 
 最後に申し上げることは、諸君が将来、医師や医療者として立つ場合の武器は何かという点であります。それは病気や障害をもつ人々の心の痛みを感じる感性と豊かな人間性を含む、人間としての総合的な力にほかなりません。体力、気力、勤勉、誠実さ、人への優しさ、思いやりなどの総合的な人間としての力量であります。その意味で、大学生活は非常に重要な人間鍛錬の場でもあります。諸君は、医学、保健医療学を懸命に学び、身体と心、そして人間を鍛えていただきたいと思います。

 本日、私は、札幌医科大学及び北海道の将来を担う諸君に期待を込めて、いろいろと要望いたしましたが、新しい札幌医科大学を諸君が創り出すという意気と気概をもって、本学の学生生活をスタートしていただきたいと思います。

 諸君のご健闘をお祈りいたします。
 
 
 平成16年4月2日
        
                                      札幌医科大学長   今井 浩三