平成23年度札幌医科大学卒業式並びに札幌医科大学大学院修了式 式辞

平成23年度卒業式

平成23年度札幌医科大学卒業式のようす

 
平成23年度札幌医科大学卒業式並びに札幌医科大学大学院修了式 式辞
               


 本日ここに、平成二十三年度札幌医科大学卒業式並びに大学院修了式を挙行するにあたり、大学を代表して式辞を申し上げます。
 本日の卒業式には、北海道知事 高橋はるみ 様、北海道議会議長 喜多龍一 様、札幌医科大学医学部同窓会長 矢花剛 様、保健医療学部同窓会長 木下 浩也 様をはじめ、多くの方々に御出席いただいております。御来賓の皆様には、ご多忙のところご臨席を賜り、厚く御礼を申し上げます。

 本日、札幌医科大学が送り出す卒業生は、医学部五十九期生百名、保健医療学部十六期生看護学科五十名、理学療法学科二十一名、作業療法学科二十一名の計百九十二名であります。また、大学院医学研究科の修士課程修了者は九名、博士課程修了者は二十七名、大学院保健医療学研究科の博士課程前期修了者は十四名、後期修了者は四名であります。

 本日めでたく学士の学位を得られました諸君、また、優れた研究成果を上げて大学院の課程を修了し、修士あるいは博士の学位を得られました諸君に、大学を挙げて心からお祝いを申し上げます。
 卒業式、修了式は、勉学、研究の大きなひと区切りであると同時に、学生から社会人への新たな出発の時でもあります。諸君の今日があるのは、自分自身の努力の結実で有ると同時に、ご両親、ご家族をはじめ、教職員、先輩、友人など多くの人々の温かい愛情と理解・支援のお陰であることを十分に認識し、感謝して、諸君の新しい人生に向かっていただきたいと思います。

 札幌医科大学は、北海道立の大学として、一九五十年に創設され、創立六十二年、開基六十七年となりました。この間、札幌医科大学は北海道における最先端の医学と医療を担い、地域医療に貢献する優秀な人材を多数送り出してまいりました。そして、現在、医学部、保健医療学部の全卒業生の大半は、北海道各地に根をおろし、最新の医学・保健医療学の知識、技術に基づいて、第一線で活躍しております。その数(かず)は、これまでに約七千七百名であります。このような先輩達の地域最前線における活躍によって、札幌医科大学は道民の皆様の大きな信頼を得るに至っておりますが、このことは、同時に卒業生諸君へ寄せる道民の皆様の期待がいかに大きいものであるかを示しております。この大学で、医学あるいは保健医療学を学んだ諸君は、卒業にあたって、改めて「進取の精神と自由闊達な気風」そして「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」という建学の精神を心に深く刻み、新しい門出についていただきたいと思います。

 この数年、日本の大学、特に医療系大学は大きな変革の潮流の中にあります。国の政策としてのライフサイエンス研究の支援と臨床への応用促進には多くの予算が投入され、本学も含めて先端的な研究が推進されております。
一方で、医師の卒後研修必修化の地域医療への大きな影響は地方における医師不足として全国的な社会現象となっており、看護師不足も深刻な問題となっております。
 このような中で、札幌医科大学も、「教育」と「医療」、「研究」の充実を目指して変革を進めて参りました。まず、地域への医師派遣が医師不足の厳しい現実の中で、毎年八百名以上の常勤・非常勤の医師が本学から派遣され、保健医療学部の卒業生とともに北海道の地域医療に大きく貢献しております。まだ道民のニーズに十分に応えているとは言えませんが、できる限りの努力をすることが道立の医療系大学である本学の重要な使命の一つであると考えます。
 地域医療を理解し、目指す医師・医療者を育てる上で、教育面での取り組みも重要です。教育面では、医学部・保健医療学部の学生による合同チームでの地域における早期体験実習を六年連続で、根室・釧路地区、紋別地区、留萌地区、利尻島と地域を拡大して実施しております。
 このプログラムの重要なポイントは、地域医療実習を通して地域医療を理解し、将来の道民医療を担う学生を育成することです。
 学生が生き生きと実習し、発表していた点が強く印象に残っておりますが、一方で、地元の方々との懇親会では、実習参加学生に対して、卒業後医師や看護師として、一人でも多く将来、地方に来てほしいという切実な声にも心を動かされたところです。この実習を受けた学生は、地域医療への関心がさらに増すという成果が得られており、全国の大学の良い例となる本学独自の教育に育って参りました。学生教育を含めて地域医療に貢献すべく大学として全力を挙げて取り組んでおりますが、この点につきましては、卒業生諸君にも今後の十分な御理解と御支援をお願い致します。

 最先端の研究に関しましては、幸いこの数年で札幌医科大学から極めてすぐれた研究が継続して発表されております。脳梗塞の再生医療や癌ワクチンなど、新しい治療法として全国から注目され、期待されている先端的研究が本学から生まれております。諸君は、医学・医療研究においても先輩をさらに越えるような成果を挙げてほしいと思います。そして、それらの成果が、病める皆様にあまねく還元されることを願っております。
 つい最近の報道にも紹介されておりますように、高橋知事、喜多議長をはじめ北海道や道議会の御理解により、新キャンパス構想の具体的な機能や整備内容が決まり、教育棟、研究所、保健医療学部棟、病院など、より教育、臨床、研究を進めやすい新しい環境の整備に取りかかります。病院については、この後具体的な構想となるため、平成二十五年度から工事が開始され、附属病院東棟の新築工事も平成二十七年より始まる予定です。

 このような新しく生まれかわりつつある本学で、諸君は努力を惜しむことなく、それぞれの才能を伸ばし最終試験に合格し、本日の卒業を迎えたわけであります。医師国家試験の合否は一九日月曜日の発表ですが、これまで通り良い結果であると信じております。看護師、理学療法士、作業療法士の国家試験も限りなく百%に近いものと大いに期待しています。
今後はそれぞれの道を選択し、札幌医科大学の卒業生として、人間性豊かな医療人としてさらなる研さんに努めていただきたいと願っております。

 本日、大学院の課程を修了する諸君は、学位を得て、研究者として、また高度医療専門職業人として自立されます。諸君は、大学院の研究の課程で、独創性を心がけ、未知の世界に敢然と挑む開拓者精神を学び、身につけてきました。諸君が、大学院で学んだ成果を医学並びに保健医療学研究の更なる進歩のために、また地域における医療や保健活動の場に生かして、活躍することを祈念致します。
 
 卒業生ならびに修了生の諸君。
この母校、札幌医科大学で学んだことに誇りをもち、北海道はもとより、広く世界の医学、医療、保健そして福祉の向上のために、大いに活躍していただけるものと信じております。テクノロジーの進歩が著しい最近ですが、テクノロジーのみで診療するのではありません。「病気を診ずして病人を診よ」と言われた慈恵医大の創始者 高木 兼寛先生の言葉を胸に、患者さんの立場で考え、対応する医師・医療人であってほしいと思います。
 大きな夢を持ち、医療、研究の現場で仕事にまい進されることと存じますが、その中で北海道民への感謝と、いろいろな形で将来、北海道のために還元することも念頭においていただきたいと思います。北海道を離れる諸君に対しては、地域医療で困っている道民の多くが期待していることを忘れないで、また北海道に戻っていただければ幸いです。
 
 終わりに、卒業生並びに大学院修了生の諸君の輝かしい前途を祝し、今後のさらなる飛躍を心から祈りまして、式辞といたします。
 
平成二十四年三月十六日
札幌医科大学 学長  島本 和明

  

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