本学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座 森勇樹助教の「過呼吸」に関するインタビュー記事が、北海道新聞(6月20日朝刊)に掲載されました

平成30年6月20日 北海道新聞朝刊の記事
平成30年6月20日 北海道新聞朝刊の記事
 過度な不安や緊張など精神的なストレスにより一時的に胸が苦しく、呼吸がしづらい状態を引き起こす「過呼吸」。手足のしびれやめまい、けいれんなどの症状を伴うケースもあるという。発症の仕組みや対応法を専門医に聞いた。(根岸寛子)
 過呼吸とは、呼吸が荒く浅くなって、息が吸えないような感覚に陥る状態。札幌医大呼吸器・アレルギー内科学講座の森勇樹助教は「医学的には『過換気』と呼びます」と話す。
 このうち、心臓(心筋梗塞など)や肺(気管支ぜんそく、気胸など)といった内臓疾患が原因となる場合を除き、心理的な原因によって引き起こされたものを「過換気症候群」という。患者は男性よりも女性に多く、特に10~20歳代に目立つ。「緊張しやすい人や不安を感じやすい人などで起きやすい」と森助教は言う。
 過換気の状態となるメカニズムは次の通りだ。精神的不安や極度の緊張などによって、息を何回も激しく吸ったり吐いたりすることで、血液中の二酸化炭素(CO2)の濃度が低下。それにより、呼吸をつかさどる神経から「呼吸をするな」との信号が出されるため、より息苦しさを感じ、余計に何度も呼吸しようとする。
 二酸化炭素の濃度が下がり、血液がアルカリ性に傾くことで、血管の収縮が起き、手足のしびれや筋肉のけいれんが起きたり、動悸(どうき)や胸の痛みを感じたりする。そのため、患者はさらに不安を感じ、症状が悪化する悪循環に陥ってしまう。森助教は「『息が吸えない感覚』に襲われているだけで、実際に酸素は十分にあり、命に関わることはない」。一般的に症状は1時間前後で改善するという。
 もし過換気の状態になったら、自身や周囲の人はどう対応したらいいか—。森助教によると、まずは落ち着つくことが大事だという。過換気の状態の体内は、血液中に酸素は十分あるが、二酸化炭素が不足している状態。だから、二酸化炭素の濃度を元に戻すため、できるだけ呼吸がゆっくりになるように心掛け、息を吸った後、数秒、息を止めてからゆっくり吐くようにする。
 周囲の人は、一緒になって慌てたりせず、「必ず良くなるよ」「大丈夫だよ」などと声をかけ、落ち着かせるように心掛けることが大切だという。かつては、紙袋を口にあてて吐いた息を吸わせる「ペーパーバック法」が取られていたこともあるが、現在は、むしろ「危険」として推奨されていない。森助教は「患者の不安を助長させたり、血液中の酸素濃度が低くなりすぎたりする可能性があり、安易な使用は危険」と指摘する。
 過換気症候群は、すぐに治まるようなら、医療機関を受診せず、経過観察でよいという。ただ、症状が継続的に続く場合は、パニック障害など他の疾患が原因となっている場合もある。自己判断をせず、内科または心療内科・精神科を受診し、医師に相談することが大切だ。
 
*過呼吸(過換気)になったら
代表的な症状
 呼吸困難
 空気が足りない感覚
 手足のけいれん・しびれ
 動悸・めまい
        など
対応は?
 まずは慌てず、落ちつく
 呼吸のリズムを「ゆっくり」
 息を吸った後、数秒息を止める
 袋を口にあてるのは危険も
 長期にわたれば診療を

【北海道新聞社許諾:D1807-1901-00020162】

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