札医大の研究室から(20) 三浦哲嗣教授に聞く(十勝毎日新聞・札幌医科大学 包括連携協定事業)

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 人間が、生命を維持していく上で欠かせない器官の「心臓」。全身に血液を送るポンプの役割を果たす心臓にはどんな疾患があり、因果関係や予防法、最新の医学はどうなっているのだろうか。今春、医学部長に就任した医学部循環器・腎臓・代謝内分泌科学講座の三浦哲嗣教授(62)に聞いた。(聞き手・浅利圭一郎)


三浦哲嗣(みうら・てつじ)

 1955年夕張市生まれ。80年札幌医科大学医学部卒業、在日米国海軍医療センター研修医。84年米国南アラバマ大学医学部生理学教室研究員。87年道立江差病院内科医長、札幌医科大学内科学第2講座助手。2007年同講座准教授。13年より現職、今年4月より医学部長。

札医大の研究室から(20) 三浦哲嗣教授に聞く 2018/05/11

浅利:心臓病にはどのような病気があるのか。
三浦:一番重要なのが心不全。心臓は、体の活動に応じて必要な分だけ全身に血液を送っているが、それがうまくできなくなるのが心不全。重症な心不全は、がんよりも予後が悪いことが知られている。心不全の原因には、心臓弁膜症や心筋梗塞、狭心症や心筋症などがあるが、いずれも医学の進歩により、治療成績が向上してきているので、重症化する前の早期発見が重要だ。

浅利:心臓病の要因はどんなものが挙げられるか。
三浦:やはり、心不全をはじめ心臓病の要因としては高血圧、脂質異常、糖尿病が重要。なかでも心臓病を引き起こしやすい糖尿病の患者数は、世界的にも過去30年間で4倍になっている。
 (糖尿病が)狭心症や動脈硬化を誘発することは以前から分かっていたが、直接心不全を引き起こすケースが多いことも明らかになっている。そのため、糖尿病の患者さんは糖尿病専門医だけでなく、われわれ循環器の医師が連携して治療に当たることが多い。

浅利:それらの予防としてできることは。
三浦:糖尿病の予防は適正な体重の管理や運動が基本。最近では、糖尿病の治療薬の中に、心不全を予防する効果があるものも出てきている。高血圧の予防には、体重管理や運動のほかに減塩、禁煙などが挙げられる。高血圧予防には、1日の食塩摂取量が6グラム以下とされており、この量を目安に食事に気を配ることが有用だ。案外知られていないが、パンやうどんには食塩が比較的多いものがあり、逆にそばや白米は塩分を含まない。売られている弁当や総菜にも食塩量が表示されているので意識すると良いと思う。

浅利:最近の治療法にはどんなものがあるか。
三浦:たとえば心臓弁膜症については、狭くなった大動脈弁を外科手術で(胸を開いて)人工弁に置き換えるのが従来の方法だが、最近ではカテーテルを利用して開胸しない方法が可能となっている。また、救急医療の現場ではインペラというカテーテル型の補助人工心臓も間もなく使える見込みで、救命救急の現場で重度の心不全患者の救命率も向上するのではないか。

浅利:医学部長としてのメッセージを。
三浦:社会の変化にともなって疾病構造や医療技術もどんどん変化している。そういった変化にグローバルな視点を持って対応できる人間性豊かな医療人を、育てていきたい。そうした目標のため、現在、札幌医大の教育研究施設や付属病院の増改築が進んでおり、2020年を目標にカリキュラムの見直しも進めている。

浅利:十勝の住民に向けて。
三浦:先ほどの塩分制限ではないが、十勝はおいしいものが多く自然環境も素晴らしいので、食生活を含めて生活環境の工夫を先導しやすい環境にあるのではないか。
 けっして都会が、医療や福祉の面ですべて優れているとは思わない。かかりつけ医と患者の関係性や認知症患者への見守りなど、地方がモデルケースになっていることも多い。医療は生活の一部でしかないので、互いの情報交換を密にして、地域ならではの生活の工夫によって病気の予防と管理に、みんなが参加していくことが大切だ。

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  • 経営企画課 企画広報係