當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第27回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム真健康論:第27回 水と塩で脱水防止(6月18日掲載)

當瀬細胞生理学講座教授

當瀬細胞生理学講座教授

真健康論:第26回 水と塩で脱水防止=當瀬規嗣

 人の体の大部分に水が存在します。体に占める水分の割合は成人で60%ぐらいと言われています。つまり水なしで生きてはいけません。また、体の中の水は、真水ではありません。必ず塩分を含む、いわば塩水になっています。

 一口に塩分と言っても、塩分にはさまざまな種類があり、人の塩水に含まれる塩分もナトリウムやカリウムなど数種類あります。実は、細胞の中にある塩水ではカリウムが多く含まれ、組織液や血液、リンパ液など細胞の周りにある塩水ではナトリウムが多く含まれています。種類は異なっていても、塩分全体で見た場合の塩水の濃さは、細胞の中も周りも同じになります。もし、細胞の周りの塩水が、細胞の中の塩水より濃くなってしまうと、細胞内外の濃さが同じになるように、水だけが細胞から周りに出てしまいます。こうなると、細胞がしぼんでしまい、働きが悪くなってしまいます

 細胞の周りの塩水が濃くなった状態を脱水と呼びます。つまり水分不足の状態です。暑い盛りには、体温を一定に保つために体から水分を蒸発させ、それによって熱を放出する必要があります。こうして体から急速に水分が失われるので、放っておくと脱水状態になるのです。ですから、これを防ぐために、こまめな水分補給が必要になります。脱水状態でとりあえず必要なのは水ですが、ジュースなど糖分の入っている飲料は、体に吸収された糖分が消費されるまでの間、細胞の周りの塩水を濃くすることに一役買うので、せっかく取っても効果があまりありません。

 一方、緑茶や紅茶、コーヒーはおしっこの量を増やすカフェインが含まれているので、水分補給としての効率は良くありません。やはり、水や湯冷ましを飲むのが一番良いのです。ただし、大汗をかいた後では、汗と一緒に相当量の塩分が失われているので、水分だけ取ると、細胞の周りの塩水が薄まってしまい、今度は細胞の中に水が入ってふくれてしまうことになります。これはこれで危険な状態です。

 こんな時は、少々の塩を一緒に取る必要がでてきます。暑い日は、まずこまめな真水の補給、大汗をかいたら、塩をナメながらの水分補給、あるいは昆布茶など塩分の入っている飲料を利用するのがお勧めです。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は7月2日掲載

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  • 経営企画課広報