當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第28回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム真健康論:第28回 紫外線対策、お忘れなく(7月16日掲載)

當瀬細胞生理学講座教授

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真健康論:第28回 紫外線対策、お忘れなく(7月16日掲載)

  今年も太陽の光によって、暑い夏が始まりました。夏といえば、熱中症というくらい「暑さ」の害に注目が集まるようになっていますが、太陽の影響は、熱だけではありません。太陽からは目でみえる電磁波である光(可視光)のほかに、不可視光である赤外線と紫外線が降り注いでいます。このうち赤外線は熱を生じる力が強いので、太陽の熱を地上に伝える役割があります。一方、紫外線は太陽光の1%程度含まれている成分ですが、化学反応や生物に対する影響が強いことで知られ、人間としては無視できないものです。

 例えば、紫外線には殺菌作用があるので、日なたの乾燥した地表面には雑菌はほとんど生息できません。布団を日なた干しすれば、表布の細菌はほぼ死滅するそうです。こんなに強力ですから、長時間、太陽の光を浴びると人にも大きな影響がでます。いわゆる日焼けです。軽いうちは皮膚が赤くなり、ひりひりして、痛みを感じます。ひどくなると、まさしくやけどの状態となり、腫れたり、水ぶくれができたりするのです。これは強力な紫外線が皮膚の細胞を破壊して炎症が生じるためです。

  そこで、皮膚は紫外線から体を守るために反応します。それはメラニン色素をたくさん作って、それを皮膚に行き渡らせ、紫外線をこの色素に吸収させてしまうことです。これにより紫外線の害を防ぐのです。なので、日焼けが続くと、皮膚がだんだん黒ずんでくるのです。ただ、この黒ずんでいく反応は、紫外線を浴び始めてから3〜4日かかるので、この間の紫外線障害をメラニン色素で防ぐことはほとんどできません。

 現生人類は10万年ほど前に東アフリカに出現して、世界に広まっていったそうですが、人類の共通の祖先は、おそらく灼熱(しゃくねつ)のアフリカにいたので、皮膚の色が今のアフリカの人と同じように黒くて、それにより紫外線から身を守っていたと考えられています。

 日本人の祖先が3万〜4万年前に日本に到達した頃は、氷河期で太陽の光が弱く、さらにユーラシア大陸の北の方を経て来たので、その間に色が抜けてしまったと考えられているのです。というわけで、日本の人は日焼けに弱い人が大多数なのです。夏の紫外線対策、お忘れなく。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)=次回は30日掲載

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  • 経営企画課広報