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當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」第8回

當瀬細胞生理学講座教授の毎日新聞連載コラム「真健康論」第8回「ドキドキは元気の証し」(9月25日毎日新聞掲載)

真健康論:第8回「ドキドキは元気の証し」=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

  心臓の鼓動は生命の象徴。でも、鼓動が順調ならば、鼓動を意識することはありません。それほど当たり前に動いているのが心臓です。もちろん心臓が止まってしまえば死んでしまうので、大事なものであることは間違いありません。

 心臓の鼓動は、安静にしていれば1分間に70回前後打たれます。このリズムは、心臓と大静脈の境目に存在する特殊な心臓の筋肉細胞で形作られます。この細胞を「ペースメーカー細胞」と呼びます。ペースメーカー細胞では電気信号が繰り返し形作られています。その頻度が心臓の鼓動のリズムなのです。作られた電気信号は心臓全体に瞬く間に広がり、それを合図にして心臓が収縮し血液を全身に押し出しています。電気信号が心臓全体に広がっていく様子を体に取り付けた電極で測定しているのが、心電図です。

 ペースメーカー細胞のリズムは、もちろん常に一定ではありません。体を動かしたりすれば、鼓動のリズムつまり心拍数は、たちまち増えます。体を動かすためには筋肉を使います。筋肉を動かすためには酸素が必要です。そこで、筋肉が動くことで高まった酸素の必要量を満たすために、自律神経の中の交感神経が働いて、ペースメーカー細胞のリズムを速めます。心拍数が多くなって、送り出す血液量が増えて、酸素の要求が満たされるという仕組みです。

 逆に就寝中などは体を動かさないので、筋肉の酸素要求量は少なくなります。今度は自律神経の中の副交感神経が働いて、ペースメーカー細胞のリズムをゆっくりとさせ、心拍数が少なくなるのです。

 こうしてみると、心拍数は1日の間でかなり変動するものであることが分かります。適度な心拍数の変動は、心臓が健康に働いている証しと言われています。逆に心拍数の変動の幅が小さいと、心不全、冠動脈疾患、急性心筋梗塞(こうそく)などの病気の発症が高くなることも報告されています。

 とすれば、適度な心拍数の変動を心がけるのは悪いことではありません。適度な運動、十分な睡眠・休息は、1日の心拍変動幅を大きくすることに役立つでしょう。楽しいことや感動することで鼓動を速くするのも悪くないかもしれませんね。恋は健康にいいかも……。証拠はありませんが。
(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

毎日新聞 2011年9月25日 東京朝刊(毎日新聞社許諾)
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2011年09月26日