當瀬細胞生理学講座教授の新コラムがスタート!

當瀬細胞生理学講座教授の連載コラム「真健康論」:第2回 「食う」「寝る」「出す」順調に(7月3日毎日新聞掲載)

真健康論:第2回 「食う」「寝る」「出す」順調に=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

 人の体は細胞によって構成されています。その数は60兆個といわれます。たくさんの細胞が働いて、人の体はスムーズに動くのです。細胞が健康なら、人は健康というわけですが、細胞の健康とはどういうことか考えてみました。

 細胞の大きさはさまざまですが、一般に0・01ミリと小さく、とても壊れやすいものです。そこで、細胞はその形と働きを保つために、常に修理をしています。修理には材料とエネルギーが必要です。材料とエネルギー源が、栄養素と酸素です。つまり、細胞は生存するために常に栄養素と酸素を必要としています。そして、修理するための時間が必要ですね。修理しているときに細胞をやたらと酷使しては、何のために修理しているのか分からなくなります。

 ところで、社会で生産活動をすると、どうしても排ガスや廃棄物が出ます。家庭からもゴミが出ます。細胞の修理活動でも同じことが起きます。排ガスである二酸化炭素と廃棄物である代謝産物が生じるので、これを細胞から運び出さないと大変なことになります。材料、修繕、排出が細胞を保つポイントです。

 実は人の体のさまざまな臓器、器官は、結局のところ細胞を保つために働いていると言っても過言ではありません。そこで、材料、修繕、排出を、人の体の働きのレベルに置き換えて考えてみます。そうすると、「食う」「寝る」「出す」であることが分かります。具体的に見てみましょう。細胞は常に栄養素を必要としますが、これはもちろん食べることで得られますね。酸素は息をすることで得られます。とりあえず息は心配ないとしても、バランスよく食べることは現代人にとっては案外難しいものです。細胞の修繕の時間は、休息で得られます。日常で言えばよく眠ることです。これも結構難しい。細胞が出した排ガスは息を吐くことで出てきますが、代謝産物を出すのは、おしっこや排便によらなければなりません。これにトラブルを抱えている人も案外多いものです。

 私たちができる身近なことは「食う」「寝る」「出す」を順調にすることだと思います。何となく元気が出ないあなた、「食う」「寝る」「出す」がおかしくありませんか。(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

毎日新聞 2011年7月3日 東京朝刊
毎日新聞社 許諾済

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  • 経営企画課広報