當瀬細胞生理学講座教授の新コラムがスタート!

當瀬細胞生理学講座教授の新コラム「真健康論」が毎日新聞に連載されます(6月19日掲載:第1回 病気を考える前に)

真健康論:第1回 病気を考える前に=當瀬規嗣(札幌医科大学医学部細胞生理学講座教授)

 「健康でありたい、できれば長生きしたい」とは、古今東西を問わず誰でも思う希望です。そこで人は健康のためと称してさまざまなことを始めます。体操やスポーツ、レクリエーション、バランスのよい食事、規則正しい生活、健康食品……。あたかもそれまでの生活が不健康であったと決めつけるように。もしこれが正しいとしたら、人は普段不健康に生活し、何か特別なことをしないと健康になれないということになります。

 これは何かおかしい。人ってそんなに不健康に暮らしているのでしょうか? あるいは人は不健康な状態が日常なのでしょうか? 現代人は病んでいると極論を述べる人までいて、あまりに自虐的だと思いませんか?

 それは現代人が「自分は健康ではないのではないか」という漠然とした不安を常に抱えているためだと思います。いつか訪れるかもしれない病気への不安の裏返しでもあります。病気への不安から逃れるため、自分の生活を制限したり、強制的に変えたりして無理を強いることになっています。

 なぜ不安になるのでしょう。もちろん社会情勢や家族の仕組みの変化とか、現代社会の抱えた病理が色濃く反映していますが、そもそも健康とはどういうことなのか、よく知らないことに起因しているためと思います。そして、ちょっとした体の変化やうわさで不安になってしまう。医者だって実は健康のことはよく分かっていないのです。だから、「健康セミナー」と銘打って病気の話ばかりします。さんざん不安をあおって最後に「健康に暮らしましょう!」。

 何か無責任ですね。といっても、健康とはこういうものだという正解は容易に見つかりそうもありません。ただ、「日常、問題なく体を使って生活できること」が健康の基本であることは明言できそうです。そこで、人の体の仕組みを見つめ直すことで、真の健康について考えようと思います。

 人の体は巧妙で結構面白いですよ。そして気が付きます。「大丈夫、みんな案外健康です」(とうせ・のりつぐ=札幌医科大教授)

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 當瀬教授の専門は体の仕組みを調べる生理学。特に心臓の鼓動がなぜ始まるのか、という謎の解明に挑んでいる。

毎日新聞 2011年6月19日 東京朝刊
毎日新聞社 許諾済み

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  • 経営企画課広報