消化器内科学講座 仲瀬裕志教授らの研究がAMED令和5年度「難治性疾患実用化研究事業(ゲノム・データ基盤、疾患基礎研究)」に採択されました

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医学部消化器内科学講座 仲瀬裕志教授
医学部消化器内科学講座 仲瀬裕志教授
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和5年度 「難治性疾患実用化研究事業(ゲノム・データ基盤 、疾患基礎研究)」に、医学部消化器内科学講座 仲瀬裕志教授の研究が採択されました。

採択内容(AMEDサイトより抜粋)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、令和5年度「難治性疾患実用化研究事業」に係る公募(ゲノム・データ基盤 、疾患基礎研究)について、本事業の課題評価委員会において厳正な審査を行った結果、下記のとおり採択課題を決定いたしました。

採択課題
②疾患基礎基盤研究プロジェクト
B. 希少難治性疾患にの克服に結びつく病態解明研究分野
B-1:希少難治性疾患の病態解明研究(病態解明)


研究概要は次のとおりです。

インフラマソーム関連腸炎の病態解明ならびに診断法確立

 潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)をはじめとする炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)の本邦患者数は、増加の一途をたどっています。本疾患は、若年者に多く発症し、生涯治療の継続が必要とされる難治性疾患のため、原因解明、適切な診断・治療法確立が必須です。IBDは病態の中心となる分⼦が患者により異なる多様性疾患であることが示唆されています。
 インフラマソームは、炎症性サイトカインの1つであるIL-1β産生を制御する細胞内のタンパク質複合体です。インフラマソームの活性化異常は種々の疾患発症に関与し、その1つに家族性地中海熱(FMF)が存在します。FMFは周期性発熱と漿膜炎を特徴とする遺伝性炎症性疾患(責任遺伝子:MEFV遺伝子)です。しかしながら、MEFV遺伝子関連腸管病変の検討は皆無に近い状況でした。2012年、我々は既存治療抵抗性の腸炎患者がMEFV遺伝子変異を有し、コルヒチンの投与で寛解に至った症例を報告しました。我々は、AMED免疫アレルギー疾患実用化研究事業「家族性地中海熱関連腸炎の診断法確立と病態解明を目指す研究」(2019-2021)にて、MEFV遺伝子関連腸炎の臨床症状・内視鏡検査所見ならびに病態解明に取り組んできました。その研究成果の1つとして、「難治性炎症性腸疾患障害に関する調査研究」(久松班)潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針(令和2年度 改訂版)に、家族性地中海熱関連腸炎が潰瘍性大腸炎の鑑別疾患として追記されたことが挙げられます(政策提言)。
 一方、MEFV遺伝子変異陰性IBDUにおいても、コルヒチン投与により腹部症状が改善する患者群が存在することが明らかとなりました。その患者群の中でアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を同定しました。これらの結果から、現行の診断基準でIBDと診断、またはIBDU患者群の中にMEFV遺伝子をはじめとするインフラマソーム活性化に寄与する遺伝子が病態の主座となる腸炎(IL-1β腸炎)群が存在する可能性が高いと考えています。インフラマソーム関連腸炎と診断できれば、IBD治療導入なしでコルヒチンという安価な薬剤で寛解維持できる可能性が高いです。従って、本疾患に関する臨床的特徴を明らかとし、病態解明に取り組むことは重要です。現在まで,IBD・IBDU患者を対象としたインフラマソーム活性化関連遺伝子変異と臨床的特徴を検討した報告はありません。
 今回、AMEDの支援を得て、インフラマソーム関連腸炎(IL-1β腸炎)に関連する遺伝子の同定ならびに病態解明に取り組みます。病態メカニズムからみたIBD・IBDUの層別化は患者予後の向上が期待でき、今後のIBD治療戦略にも大きなインパクトを与えます。本研究成果を広く国民に向け発信し、IBD診断・治療指針およびガイドラインへの反映を目指していきます。また、FMFの臨床症状の1つとしての腸管病変の存在をガイドラインへ反映させることを目指していきます。

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情報発信元
  • 事務局研究支援課