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(4/1北海道新聞夕刊掲載) 魚眼図~知覧の桜~解剖学第2講座・藤宮教授コラム

魚眼図~知覧の桜~解剖学第2講座・藤宮教授コラム(4/1北海道新聞夕刊掲載)

解剖学第2講座・藤宮峰子教授の北海道新聞夕刊の「魚眼図」に掲載しているコラムをご毎月紹介しています。


[書 誌]
  知覧(鹿児島県南九州市)の特攻基地を訪れた。昭和20年4月からわずか4カ月の間に千人以上の若者が飛行機もろとも南海に散っていった。ほとんどが19歳から22歳の若者で、今の大学1年から社会人1年生の年格好だ。
  時代が違うと言えばそれまでだが、今春新生活を始めるフレッシュマンと、特攻隊員として散っていった若者とが重なる。家族に宛(あ)てた遺書が公開されていた。「愛する家族や日本の国が救われるなら、自分の命を投げ出しても惜しくはない」と。これら多くの若者の犠牲のうえに、戦後の日本の発展があったことは間違いない。
あれから65年。春爛漫(らんまん)の日本で、新しい人生の期待に弾む若者たちのなんと自由で豊かなことか。不景気で大変と言うけれど、戦争にかり出されて命を取られるわけではない。収入が低いと言うけれど、飢え死にするわけではない。
  今の日本はグローバル化の名のもとに、国家の意識が薄れている。しかし、日本人の意識とは無関係に、世界は国家間の利害関係や駆け引きで動いており、利害の対立が起これば、使いたくてうずうずしている核兵器が登場することになるのだろう。
  新しい人生を踏み出す君たちへ。日本が悲惨な戦争を経験したのは、決して大昔の話ではない。人類の歴史の必然として戦争があり、同じ年格好の若者が命を投げ出して国を守ったのはつい先日の出来事なのだ。豊かで平和な今を生きるわれわれは、どうすればこの命の犠牲に応えられるのだろうか。深い祈りと鎮魂の中でしか、この答えは得られない。今、知覧の桜は咲き、英霊の眠る海は青く輝いていることだろう。
(藤宮峯子・札幌医科大教授=解剖学)

北海道新聞社許諾 D0907-1001-00005804
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2010年04月05日