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プレスリリース・メディア

魚眼図~豊かな死~(12月14日北海道新聞夕刊掲載)

魚眼図~豊かな死~解剖学第二講座 藤宮峯子教授(12月14日北海道新聞夕刊掲載)

北海道新聞掲載記事
北海道新聞夕刊「魚眼図」に掲載された解剖学第二講座・藤宮峯子教授のコラムを毎月ご紹介しています。

2010/12/14,北海道新聞夕刊全道,6ページ

~豊かな死~

 枯れ葉がからからと舞う落ち葉の道も、まもなく雪に覆いつくされるだろう。緑が芽を吹く来春まで、草木とはしばしの別れだ。

 解剖学者の私は、季節のめぐりをついつい人の生死に重ねてしまう。これまで幾多の死と向き合ってきたことか。臨床医のころは人を生きさせることに精いっぱいで、死は敗北だった。しかし、今の仕事は死から始まるから、もうじたばたすることはない。私の仕事は、死に意味を持たせることであり、献体した人の遺志を次世代に引き継いでいくことだ。

 死は豊かなものだと思う。解剖学実習で学生が死者の魂に触れ、良き医師に育つことで多くの患者の命が救われる。人の死は温かい心の連鎖反応の始まりなのだ。

 死は、平面的に生きる人間の感性を多次元に引き上げてくれる。この世で起こるさまざまな出来事、国際情勢や経済不況や社会不安などや、個人的な恨みやいざこざなどは、宇宙をおおう生命の本質のなかでは取るに足らない小さいことと感じさせてくれる。

 生だけを見ているうちは、与えられた命の深遠さや生きることの意義深さに気づかないものだ。死を見つめて初めて、命の意味を知ることになる。

 今日、この人と出会った。悠久の時間と無限の空間を飛び越えて奇跡的な出会いを果たしたわけだ。とてもよく気が合うのは、DNAに刻まれた遠い記憶が呼び覚まされるからだろう。なんて素晴らしいことだろう。巡り合いと別れ、生と死、歓(よろこ)びと悲しみ。すべてを感謝の心で受け入れたとき、死そのものも怖くはなくなる。

(藤宮峯子・札幌医科大教授=解剖学)

北海道新聞社許諾D1007-1101-00006651
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2010年12月15日

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