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魚眼図~「若いということ」~(10月5日北海道新聞夕刊掲載)

魚眼図~「若いということ」~解剖学第2講座 藤宮峯子教授(10月5日北海道新聞夕刊掲載)

北海道新聞掲載記事
北海道新聞夕刊「魚眼図」に掲載された解剖学第2講座・藤宮峯子教授の
コラムを毎月ご紹介しています。

2010/10/05, 北海道新聞夕刊全道, 6ページ

~若いということ~

 大学で学生や研修医に接していると、若いということは苦しいことだと思う。
 無限の可能性があるということは、360度視界の開けた荒野にぽつりと置かれたようで不安も大きい。

  私自身もそうだった。
 卒業して10年は、ブッシュの生い茂る道を手探りで歩き、行く手の景色さえ見えなかった。職場に慣れた次の10年は、オフロードを走る車を運転する心境だった。
  やみくもにハンドルを動かすが、どっちの方向に進んでいるのかわからず、沼や森に行く手を阻まれることしきりだった。次の10年は、やっと舗装された道路を走りだした。
しかし、道標はなく、分岐点にさしかかる度に、不安におびえた。夜には、ヘッドライトは数十メートル先しか照らさず、その先は暗闇だった。

 そして卒後30年。
  今は、自分の行く先も見えてきて、線路を走る列車に乗った気がする。脱線しない限り、このまま目的地に着くだろう。しかし安全であることは、もう冒険できないことを意味し、可能性がきわめて狭まったことを意味する。

  最近、若い人たちは冒険をしなくなったといわれる。
  はじめから目的地の決まった安全な乗り物に乗り、駅弁でも食べながら風景を楽しむような人生を送りたがっているようだ。
  しかし、不安定で苦しいことの多かった自分の人生を振り返ってみると、その途上でどれほどすばらしい出会いがあり、多くの友情に支えられたことかと思う。人々の温かい心こそが闇を照らすともしびだった。
  若い人には荒野をたくましく歩く冒険家であってほしい。
そして、夢と希望を無限の彼方(かなた)につないでいってほしい。私の汽車も宇宙の彼方を目指しているから。

(藤宮峯子・札幌医科大教授=解剖学)


北海道新聞社許諾 D1007-1101-00006651
  • 経営企画課広報
  • 発行日:2010年10月05日

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