化学教室

生命は化学物質から構成され,その生理やその異常による疾患の原因と成り立ちは化学反応により説明されます。薬物的・物理的治療を含めた医療,あるいは基礎医学研究を実施するためには,化学的知識とそれに基づく論理的思考が必要とされます。基礎科目につづく専門科目の履修や臨床実習は,化学的基盤を備えていることが前提とされます。また現代の医学では,医療材料や薬物などを扱う幅広い専門分野の研究者と適切な連携を行う力も求められます。医療を学ぶ初期には,先端医療や生命科学研究のアーリーエクスポージャーだけに目を奪われることなく,科学的にものごとを捉えるための前提となる化学,生物,物理,数学などの自然科学分野の知識を十分に身につけることが必要であり,医療系導入教育はそれを目的として行われます。

化学教室では,自然免疫をキーワードとして,細胞性応答および液性応答による感染症をはじめとする生体恒常性の調節機構,また,宿主と微生物の相互応答による感染調節の基本機構に関して,物質の化学反応に基づいた研究を展開しています。宿主の細胞性応答ではマクロファージや好中球による細菌やウイルスの認識と排除を,液性応答では肺サーファクタントや抗菌性物質による細菌排除の機能制御を調べています。一方で,細菌の宿主感知と遺伝子発現を制御する分子の働きを調べることで,宿主免疫への抵抗機構や,感染調節の仕組みを明らかにすることを目指しています。

スタッフ

教授 Professor
平山(白土)明子, Shiratsuchi-Hirayama, Akiko
所属 医療人育成センター教養教育部門 化学教室
   大学院医学研究科 生体機能制御学領域
Department of Liberal Arts and Sciences
Graduate School of Medicine

教育歴 札幌北高等学校,金沢大学大学院博士課程(1999年修了)
研究歴:日本学術振興会特別研究員(PD)(1999年),金沢大学薬学部講師(1999年),金沢大学大学院医学系研究科循環医化学専攻講師(2001年)・准教授(2008年),金沢大学医薬保健研究科薬学系准教授(2008年),札幌医科大学医療人育成センター・同大学院医学研究科教授(2018年)

専門:
 生化学,免疫生化学,Biochemistry
研究テーマ:
 ・宿主認識による細菌の遺伝子発現変化と感染症の調節
 ・自然免疫による微生物の認識と排除機構
研究活動と展望:
 宿主と微生物が遭遇すると,それぞれが他者を認識して遺伝子発現を変化させ,特有のタンパク質レパートリーを持つように変化する。宿主は免疫反応を発動し,微生物は免疫を回避しつつ生存と増殖をしようとする。その総和が,感染症や両者の共存状態を規定すると考えることができる。宿主と細菌およびウイルスの相互応答を規定する反応を,分子レベルで明らかにする。


准教授 Associate Professor
有木茂 Ariki, Shigeru
所属 医療人育成センター教養教育部門 化学教室
Department of Liberal Arts and Sciences

専門:
 生化学,自然免疫
研究テーマ:
 ・肺コレクチンの生体防御機能解明
研究活動と展望:
 肺胞表面には、肺サーファクタントとよばれる脂質—タンパク質複合体が存在する。肺サーファクタントは円滑な呼吸を維持するために必須の物質であると同時に、生体防御反応にも関与している。肺サーファクタントに含まれる肺コレクチンというタンパク質の生体防御機能を明らかにすることで、呼吸器感染症の予防法・治療法開発に貢献したい。特に、細胞内寄生細菌の排除過程や、抗菌ペプチドの機能制御における肺コレクチンの役割に注目して研究を進めている。