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札幌医科大学医学部 消化器・免疫・リウマチ内科学講座


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札幌医科大学医学部 消化器・免疫・リウマチ内科学講座
 私たちは従来、シェーグレン症候群と診断されていた症例のなかに、涙腺・唾液腺の持続性腫脹を呈する一群を見出し、これらの症例は、ステロイド治療により、腺腫脹が速やかに消退するのみならず、腺分泌能の改善が認められるという特徴を有していることがわかった1)。この一群は、1880年代に初めて報告された、ミクリッツ病(図1)2)に類似していると思われたが、ミクリッツ病は、その後、当時の病理組織学的解析により、シェーグレン症候群と同一疾患である3)という結論に至っている。しかし、私たちは、持続的に涙腺・唾液腺腫脹を呈する症例(以下、ミクリッツ病と呼称する)の血清学的解析を、シェーグレン症候群と対比しながら行った結果、ミクリッツ病では、抗核抗体は陰性例が多く、またシェーグレン症候群に特異的な抗SS-A抗体はほとんど陰性であった。さらにミクリッツ病では、著明な高IgG4血症を呈するという免疫学的特徴を見出した(図2)。これは、シェーグレン症候群や他のリウマチ性疾患では観察されない極めて特異的な所見であった4)
  組織学的には、ミクリッツ病の涙腺・大唾液腺組織において、その導管・腺房周囲に著明な炎症細胞浸潤が観察される。典型的な原発性シェーグレン症候群と非常に類似し、区別は困難であることが多い3) 。しかし抗IgG4モノクローナル抗体染色を行なうと、ミクリッツ病症例の標本のみに、小葉内に多数のリンパ球やIgG4陽性細胞浸潤が確認された。これらのIgG4陽性細胞は形質細胞であった。この所見は、ミクリッツ病症例の小唾液腺組織でも観察された(図3)。涙腺や顎下腺組織では、胚中心の発達した多数のリンパ濾胞の形成がみられ、それを取り巻くように線維化が小葉間にみられた。リンパ濾胞辺縁帯にIgG4陽性形質細胞が認められることが多い.
図1 
ミクリッツ病と全身性IgG4関連疾患(SIPS)
山本元久 助教
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 従って、ミクリッツ病は高IgG4血症と罹患腺組織中のIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とした、全身性の慢性炎症性疾患(全身性IgG4関連疾患)の様相を呈しつつあり(図5)9)、ミクリッツ病がシェーグレン症候群と異なった新たな新規リウマチ性疾患として位置づけられる可能性が高い9), 10)。私たちはこの病態を、systemic IgG4-related plasmacytic syndrome(SIPS)と呼称し、リウマチ膠原病グループ(実験主任:苗代康可)で、病態の解明および新規治療法の開発に挑んでいる
 尚、2008年秋に、日本シェーグレン症候群研究会(代表世話人: 筑波大 住田孝之教授)において、IgG4関連ミクリッツ病の診断基準が承認された(表1)。今後、疾患概念の認識の普及にも努めたい。

図2 ミクリッツ病39名と原発性シェーグレン症候群30名における各IgGサブクラス

ミクリッツ病(左)と原発性シェーグレン症候群(右)の小唾液腺生検における抗IgG4モノクローナル抗体染色

図3 
図4

自己免疫性膵炎(A: CTにて膵臓のびまん性腫大、B: 膵管周囲にIgG4陽性形質細胞浸潤)、間質性腎炎(C: 造影CTで腎に多発性・腫瘤形成性に造影不良域を認める。D: 尿細管周囲に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤)と前立腺(E: 前立腺の腫大、F: 腺組織内にIgG4陽性形質細胞浸潤)

図5 全身性IgG4関連疾患(SIPS)の疾患概念

References
1. Yamamoto M, et al.: Beneficial effects of steroid therapy for Mikulicz’s disease. Rheumatology (Oxford) 44: 1322-1323, 2005.
2. Mikulicz J: Über eine eigenartige symmetrishe Erkrankung der Tranen und Mundspeicheldrusen. Beitr. Z. Chir. Fesrschr. F. Theodor Billroth. Stuttgart. 1892. pp610-630.
3. Morgan WS, Castleman B: A clinicopathologic study of “Mikulicz’s disease.” Amer J Pathol. 29: 471-503, 1953.
4. Yamamoto M, et al: Elevated IgG4 concentrations in serum of patients with Mikulicz’s disease. Scand J Rheum. 33: 432-433, 2004.
5. Hamano H, et al.: High serum IgG4 concentrations in patients with sclerosing pancreatitis. N Engl J Med. 344: 732-8, 2001.
6. 山本元久,他:ステロイド療法により耐糖能障害の改善を認めた自己免疫性膵炎合併Mikulicz病の1例.日臨免誌 28: 349-356, 2005.
7. Saeki T, et al.: Renal lesions in IgG4-related systemic disease. Intern Med. 46: 1365-1371, 2007.
8. Hamano H, et al: Hydronephrosis associated with retroperitoneal fibrosis and sclerosing pancreatitis. Lancet 359: 1403-1404, 2002.
9. 山本元久,他:ミクリッツ病における疾患独立性の意義-Revival of interests in Mikulicz’s disease-.日臨免誌 29: 1-7, 2006.
10. Yamamoto M, et al: Clinical and pathological characteristics of Mikulicz’s disease (IgG4-related plasmacytic exocrinopathy). Autoimmunity Rev. 4: 195-200, 2005.

補足
ミクリッツ病に関する文献がPDF版で、下記のアドレスから引けます。
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsci/29/1/_contents/-char/ja/
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsci/31/1/_contents/-char/ja/


Johann von Mikulicz-Radeckiが初めて報告した、ミクリッツ病症例