●○国際交流レポート○●
「中国医科大学の情報化見聞録」 附属情報センター助手 青木 文夫
派遣先:中国医科大学
派遣期間:平成12年8月6日〜8月27日
 2000年8月6日から27日まで、関係各位のご高配を戴きまして、北方医学交流事業の短期学術交流研究員として、
中国医科大学の電化教育センターに受け入れて頂きました。両校間のこれまでの短期交流は、医学分野の研究員が主として
派遣していましたが、今回のように非医学分野の私が非医学分野の短期交流をしたのは、初めてのことでした。

中国瀋陽市中心、宿泊先の窓から

遼寧賓館、筆者の宿泊先
 今回の短期交流の目的として、中国医科大学の情報インフラの整備状況および各附属病院医療の情報化現状を調査し、今 後両校間の医療情報分野における協力内容と可能性ついて積極的な協議ができればと考えていました。最初の一週間余りは 電化教育センターに席を設けて頂きまして、大学内の情報インフラおよび情報教育について調査を行いました。このセンタ ーは、全校の教師と学生に対して医学教育関連の電子教材を提供しています。電子教材の全体構成、標本製作やCG製作、 サーバ構築やプログラムの開発、運用業務など、すべてセンターの主導で遂行しています。現在、WEBベースの解剖教材 データベースが運用されていて、これを使いますと、教師が自分の授業内容に沿って授業前に教材や試験問題を組立て作成 し、授業中にセンターのデータベースにアクセスして授業を行います。試験の形態は、同時に行う集中試験と学生が自由な 時間にできる個別試験の二種類があります。このほか、電子教材のCDROM版も編集出版しています。現在CDROM教 材7タイトルと人体解剖図譜の本を出版中です。今回の短期交流終了時、電化教育センターから解剖関連CDROMタイト ル一つを贈られました。また、これからの学術交流について、電子教材データベースやCDROMのタイトルの日本語化と 出版、共同で医学教育データベースの開発などの要望も出されました。

電化教育センターの陳教授と学生

電化教育センターに筆者の席
 電化教育センターでの交流の一環として、私のVHP(Visible Human Project)に関する研究成果についても紹介しました。 センターの陳教授は、人体解剖の画像データと私の任意解剖断面の生成方法に多いに興味を示し、早速新しいコンピュータ を購入して、実験の環境を整えてもらいました。続いてハードウェアの改造、ソフトウェアのインストール、画像データの 転送、プログラムの修正と実験などを行い、現地で解剖断面の高速生成システムを再構築しました。しかし、私のシステム は数十台のコンピュータをネットワークでつないで、並列処理によって断面画像の高速生成ができるプログラムのため、単 体コンピュータ上の改造したシステムによる画像生成は、非常に時間がかかる作業になってしまい、ちょっと残念な気分で した。また、インターネットを利用して中国医大と札幌医大との間でテレビ会議システムによる通信実験も試みしましたが、 昼間の通信回線がたいへん込み合っているため、動画像の通信ができず悪音質ながら音声のみの通信ができました。

日本との間でテレビ電話実験の様子

第一附属病院の遠隔医療センター
 大学内の情報インフラの整備については、図書館、情報センター、コンピュータ教育センターなどを調査しましたが、各 部署が単独で内部ネットワークを整備しており、大学全体のネットワークはまだ形成されていません。大学の教員や学生の インターネット利用は、個人的に社会のプロバイダに加入し、ダイアルアップによる接続して電子メールやネットサーフィ ンを行う形態になっています。日本と同様、教育機関も専用ネットワークがあり、図書館の情報ネットワーク部門により管 理されています。しかし、中国医大から上流サイトへは専用回線による接続されていますが、大学内部のネットワークが整 備されていないため、学内からの接続は内線電話で図書館の情報ネットワークへのダイアルアップに頼るしかないのは現状 のようです。近年、中国国内のインターネット人口が凄まじい勢いで増加し、社会的に情報インフラも整備されづつ、中国 医科大学にも最新のネットワーク機材を導入した新しい教育研究棟の建設を計画しています。  短期交流の後半は、第一附属病院と第二附属病院の医療情報部門を中心に紹介して頂きました。それぞれの附属病院にほ ぼ日本の大病院と同じ、受付、診療科、薬局、会計、病棟などほとんどのところにネットワーク端末が設置され、すべての 受付、検査、処方、会計など業務がコンピュータ化されています。第一附属病院のオーダーシステムはIBMのハードウェ アによる構成され、ソフトウェアもIBMのチームが作成しています。第二附属病院のメインサーバはサンマイクロの機器 で、ソフトウェアは中国国内のソフトウェアメーカによる作られています。両病院のシステムともメーカからの人員が常駐 しており、通常業務、日常保守、障害対応などを行っています。コンピュータ化により、医療にかかわる日常業務が効率よ く遂行できるようになったが、カルテデータの蓄積、医用画像のオンライン化、カルテの共用化など、なお多くの課題が残 っているようです。例えば、患者の自ら自分のカルテ、投薬、費用などの情報を院内に設置されている端末で確認すること ができますが、大勢の患者が周りにいますので、守秘やセキュリティの強化などが今後の課題だと感じました。

中国医科大学第一附属病院

中国医科大学第二附属病院
 テレビ会議システムによる遠隔診断については、遠隔診断センターという部門があると聞き、見学させてもらいました。 設置されている通信と診断システムの基本機能は、ほぼ日本の病院のシステムと同様、専用の部屋と専属スタッフも配置さ れています。遠隔診断も地方の病院から要望がある時に不定期で行っているようです。  瀋陽における3週間を滞在し、大学と附属病院のスタッフや先生のほか、病院情報システムのメーカとも交流ができ、札 幌医科大学と中国医科大学との間における多分野の交流を展開する有益の第一歩と感じています。そして、このような貴重 な機会を与えて頂きました国際交流委員会をはじめとする諸先生方と関係者の方々、中国医科大学の諸先生方に心から感謝 を申し上げます。
写真:左から、国際交流処の才副処長、電化教育センターの陳教授、筆者、国際交流処の鄒処長、李先生