不妊症・内分泌外来
当院の生殖内分泌外来(不妊症外来など)の特徴
当院では、日本生殖医学会認定の生殖医療専門医を中心に、また当院泌尿器科など他科とも連携し、不妊症、習慣流産、内分泌異常など中心に診療を行っています。つまり治療の必要な男性は泌尿器科と連携が必要ですし、また様々な合併症をもっている女性の場合は、当院の内科などとの連携が必須です。当院は、大学附属病院という利を生かして、膠原病、糖尿病などはじめ様々な合併症をもった方にも対応しています。
当科での診療の対象となる患者様
当科では、月経異常、排卵障害、不妊症、不育症、その他の内分泌異常の診察治療を致します。
具体的には、無月経、月経不順、月経困難症、子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞、子宮腺筋症など)、子宮筋腫、卵管性不妊症、男性不妊症(泌尿器科と連携)、難治性不妊症、習慣(反復)流産などを対象としています。
治療としては、人工授精、体外受精・胚移植、顕微授精、胚凍結、内視鏡施術(腹腔鏡手術、卵管鏡手術、子宮鏡手術)、抗凝固療法、夫リンパ球免疫療法等を実施しています。
体外受精を中心とした生殖補助医療について
日本で生殖補助医療(体外受精・胚移植、顕微授精など)により妊娠した赤ちゃんは毎年1万5千人以上誕生しています。つまり日本で生まれる赤ちゃんの約65人に1人はこの生殖補助医療によって妊娠した赤ちゃんなのです。最近の特徴として胚盤胞移植や直接睾丸から精子をとる方法TESEなども行われ実績を上げています。今や生殖補助医療はこのようにごく一般的な治療になってきています。かかる費用に関しても一部は地方自治体からの補助を受けることが可能になりました。当科の生殖補助医療の平成19年の年間妊娠率は33%(対症例当り)でした。
当科における最近1年間の採卵数は120例前後ですが、その半数近くは40歳以上の方です。なお当科の体外受精の受精卵の培養担当は、資格をもった日本哺乳動物卵子学会認定の胚培養師が実施しています。
卵管形成術、子宮筋腫、子宮内膜症(子宮腺筋症)の内視鏡手術
不妊症に関わる手術として腹腔鏡下子宮筋腫核出術、子宮鏡下粘膜下筋腫核出術(レゼクトスコピー)などは比較的よく行われていますが、現在卵管形成術をする施設は極めて限られています。現実には卵管の問題で妊娠できない方が増えているのが現状です。卵管通過障害の場合には卵管形成術(腹腔鏡手術、卵管鏡手術など)をすれば妊娠できる方がいます。このような方法で卵管が通るようになれば体外受精をしなくても妊娠できます。また避妊手術で卵管を結んだ方の卵管をつなぐ手術も腹腔鏡で行なっています。また症例によっては子宮腺筋症の核出術も腹腔鏡で実施しています。腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術には単孔法(一つの穴で手術をする)も実施しています。
習慣流産(不育症)について
妊娠は比較的すぐにするのですが、残念なが流産、死産をくり返す方がいます。原因には、ホルモン異常、子宮の形態異常、血栓形成傾向、染色体異常、妊娠免疫異常などがあります。治療にはホルモン治療、子宮の手術(子宮形成術、子宮頚管縫縮術など)、抗リン脂質抗体症候群にはアスピリンやヘパリンなどの抗凝固療法のほか、重症例には血漿交換なども実施しています。妊娠免疫異常の方には日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会報告に従い夫リンパ球の免疫療法も実施しています。その他の特殊な高度医療も実施し実績を上げています。
多嚢胞性卵巣症候群polycystic ovary syndrome(PCOS)について
卵巣の小さい卵胞がたくさんあるのに排卵しにくい多嚢胞性卵巣症候群は、生殖年齢の5~10%の女性に存在すると最も高頻度の疾患と言われています。つまりこれは、どこにでもあるありふれた病気で、高校生の世代から成熟した女性の皆様に関係があります。代表的な症状は月経不順、無月経、不妊症、流産のほか多毛などもありあります。また半数の方はやや肥満傾向がありメタボリック症候群との関係も注目されています。 当科では、これまで全国有数の治療拠点として実績を上げております。
多嚢胞性卵巣症候群と排卵障害について
治療はのみ薬のクロミフェン、注射のFSH製剤が一般的ですが、卵巣のドリリング法(腹腔鏡を用いて卵巣に小さい穴をたくさんあける方法)、また近年注目されているインスリン抵抗性改善薬などの治療法があります。この点に関して本学の臨床研究審査委員会の許可を得て、様々な新しい治療を試みています。また多嚢胞性卵巣症候群のヒトに注射による排卵誘発をする場合は卵巣過剰刺激症候群に気をつけなければならなりません。これは、腹水貯留、胸水貯留、腎機能障害、肝機能障害、血栓形成のほか、稀には生命に関わることもある合併症です。これは注射による排卵誘発以外では起こりませんが、いくら注意をしても発症を避けられない場合もあります。当教室では市中病院から数多くの搬送を受け入れ治療しています。
多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性(メタボリックシンドローム)との関係
多嚢性卵巣症候群の方は半数近くにインスリン抵抗性を持っています。インスリン抵抗性とは、血糖を正常にするためのインスリンが効きにくい体質のことです。これは生活習慣病であるメタボリックシンドローム(糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化)などとの関連が指摘されています。多嚢胞性卵巣症候群の方は、このような生活習慣病にややなりやすい傾向がありますので、生活習慣を改善することによりかからないように注意することが必要です。
多嚢胞性卵巣症候群と分子遺伝学的研究について
多嚢胞性卵巣症候群はその方の体質を理解する事が大事です。私たちは本学のゲノム委員会の許可を得てそのヒトの分子遺伝学的体質(遺伝子多型)明らかにする研究をしています。その方の遺伝子多型に合わせた治療を考えるオーダーメイド医療を目指しています。
※遺伝子多型とは、たとえばお酒に強い方弱い方がいるのは、遺伝子の1個の塩基の差によるというような遺伝子による体質の違いのことです。
悪性腫瘍と妊娠について
悪性腫瘍(子宮がん、卵巣がんなど)で治療が済んだ方が妊娠さるよう積極的治療しております。特に日本でも数例しか報告されていない子宮頸がんに対する広汎性子宮頸部切除術後の妊娠も当科では複数例になって来ております。
卵巣機能調節・排卵に関する基礎的研究について
卵巣は女性にとって非常に大切な臓器で妊娠に必須の排卵現象や女性ホルモンの産生などを担っています。当教室はその卵巣の働きを、内分泌学的・分子生物学的手法で長年研究を続けて来ました。たとえばこれまでは米国エール大学産婦人科内分泌学教室との共同研究、また近年は特に多嚢胞性卵巣症候群に関して関連施設との共同研究(斗南病院、神谷レディースクリニック、エナ・レディースクリニック、五輪橋産科婦人科小児科病院、美加レディースクリニック、苫小牧レディースクリニック、大谷地産婦人科等)を集中的に実施し、数多くの論文を発表し、学会発表をおこなっております。
性同一性障害(GID)外来について
婦人科では内分泌外来担当者が、GIDの方の診療を行っています。今まで約150名のFTMの方の診察をして、特徴的なのは一般集団よりも多嚢胞性卵巣症候群の頻度が極端に高いことです。この方たちは将来的には生活習慣病になりやすく、注意深い観察が必要です。特に性ホルモンを投与開始後の副作用に注目したフォローをしています。
産科との連携
当科の特徴は不妊の方が妊娠するまで、不育症の方の流産防止、また一旦妊娠するとその後も同様に安全な分娩をするまで一貫して同じグループの医師が診るシステムになっています。