不育症(着床前診断・免疫グロブリン療法)

当科では、不妊症や遺伝にかかわる外来につきまして、以下の外来にて対応しております。

外来診察日
毎週木曜(午後) 不育症・遺伝外来
(臨床遺伝専門医かつ生殖医療専門医が担当)
その他の曜日(午前) 不妊症・生殖内分泌外来

不育症とは

妊娠は比較的容易にするのですが、流産をしたり、妊娠中に赤ちゃんがお腹の中で亡くなって、元気な赤ちゃんが授からない場合を指します。習慣流産は3回以上の流産を経験された方を指し、2回の場合は反復流産と言います。
不育症の頻度は日本での正確な統計はないものの一般的には1%前後と考えられています。
不育症の原因は多岐にわたると考えられています。ただ原因不明のことも多く、精査をしても約半分は原因不明の不育症となってしまいます。

厚労省研究班の不育症ホームページ

不育症の原因検索(産婦人科診療ガイドライン産科編2014推奨)

1. 抗リン脂質抗体症候群
ループス・アンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体(IgG、IgM)や抗カルジオリピンβ2GPI抗体が陽性の場合で、動静脈血栓症の原因となり、時には心筋梗塞を発症することがあるので要注意です。
治療としては低用量アスピリンの服用、ヘパリンの注射のほか、重症の場合は血漿交換が必要なこともあります。また、免疫グロブリンの投与による治療もあります。このような場合は関係内科との密接な連携が必要になります。
2. 子宮の形態異常(例えば中隔子宮)がある時は手術治療が必要です。
3. 夫婦の染色体検査
4. ご夫婦のどちらからが染色体の均衡型構造異常(均衡型相互転座、ロバートソン転座、腕間逆位など)が不育症の原因となる場合が5%前後になるという報告もあります。
このような場合には、流産を回避するための対策として着床前診断があります。
5. 流産絨毛の染色体検査
一般に流産は全妊娠の約10~15%に発生し、半数以上は胎児側の染色体異常が原因であると言われています。この検査で、染色体異常の有無やその種類を診断することができます。分析結果は流死産の原因究明の一助となるだけでなく、その後の妊娠の治療方針を考える上で重要な情報となります。
6. 不育症の約半分は原因不明ですが、それに対する免疫グロブリンの治験を開始しています。

※これまで言われてきた黄体機能不全、血液凝固異常(XII因子、プロテインC、プロテインS)などは、今回のガイドラインの推奨検査から除かれました。ただ、全く関係がないとは言い切れないため、当科では引き続き検査を実施しています。また甲状腺機能異常(亢進症、低下症)や糖尿病などにも留意が必要です。

着床前診断とは

2013年3月に染色体の均衡型構造異常が原因で流産を繰り返している方に対する「着床前診断」が日本産科婦人科学会から承認を受けて、現在複数の方に実施しています。

ご夫婦のどちらからが染色体の均衡型構造異常(均衡型相互転座、ロバートソン転座、腕間逆位など)が不育症の原因となる場合が5%前後になるという報告もあります。
このような患者さんに対して体外受精を施行し、たとえば8個の細胞からなる受精卵から1個の細胞を取り出し、遺伝子診断により染色体の構造異常が無い受精卵を選んで移植し、元気な赤ちゃんを授かる方法です。
当科は東京以北では初めての着床前診断の実施施設であり、道民の皆さまのご要望にお応えするかたちでこの着床前診断を開始しています。これはまだ全国で十数カ所でしか実施していません。なお、当科ではアレイCGHという方法で染色体異常を調べています。

原因不明の不育症に対する免疫グロブリンの臨床試験について

2014年5月から原因不明の不育症例に対して、「免疫グロブリンを投与する治験」が始まりました。

原因不明の不育症は、原因がわからないため、原因に対する治療が出来ません。
これまで原因不明の不育症には、何もせずに経過観察、低用量アスピリンの服用、低用量アスピリンに加えてヘパリンの注射、あるいは夫リンパ球の免疫療法などを実施して来ましたが、それでも効果の無い方がかなりいます。
今回の治験は免疫グロブリンという重症感染症や、特発性血小板減少症に保険適応がある薬を原因不明不育症例に投与してその効果を検証する治験です。これまで不育症に対する免疫グロブリンの作用機序はマクロファージ、補体、免疫複合体、自己抗体、Th1サイトカインなどに対する効果が考えられています。
ただし、今回の治験の免疫グロブリン療法は受けられる方が厳密に規定されています。
詳細は、札幌医科大学附属病院産科周産期科からのお知らせをご参照ください。

出生前診断についてはこちら