Entered: [1997.05.03] Updated: [1997.05.06] E-会報 No. 37(1996年 11月)
合同シンポジウム講演要旨

B細胞に発現する新しいCD28,CTLA4結合分子,ACBMの同定とその機能
北海道大学・免疫科学研究所・免疫病態部門
村上 正晃


 最近、T細胞の活性化、不活性化は接着分子を介するcostimulatory信号によって規定されていることが明らかになってきた。最も良く研究されたT細胞上の接着分子にCD28とCTLA4があり、これまでにCD28、CTLA4のリガンドとして抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2が遺伝子単離されている。生体内で抗原特異的なT細胞受容体刺激時にCD28を介する信号をCTLA4Igあるいは抗CD28Fabを用いて阻害するとT細胞は抗原特異的な不応答状態となる。一方、CTLA4を介する信号を抗CTLA4抗体を用いて阻害すると逆にT細胞の活性化が起こる。これらのことから、CD28、CTLA4信号伝達機構の修飾で癌、AIDS、移植を人為的にコントロールできる可能性がある。

 今回、新しいCD28、CTLA4結合分子を同定する目的で以下の研究を行った。変異を導入してB7-1およびB7-2に結合できなくなったmCTLA4とhIgGのFc領域の融合蛋白を作製し、その結合を解析した結果、新しいCD28、CTLA4結合分子(Alternative CTLA4 Binding Molecule;AC3M)をマウス未熟B細胞株WEHI231上で同定することができた。ACBM分子はCTLA4およびCD28両者に結合することができる約130kDダイマーの分子であった。また、T細胞に増殖のためのcostimulatory信号を導入することができた。

 さらに、いくつかの変異型CTLA4Igを作製し、それら分子の37-1、37-2、ACBM分子への結合性を解析するとB7-1、B7-2とCTLA4Igの結合はCTLA4上の立体構造を認識しているのに対してACBMとCTLA4Igの結合はCTLA4上のCDR3様領域を認識ていることが示された。また、マウス生体内の発現解析から、ACBMは未熟B細胞特異的に発現し、マウスのstrainで発現の強弱があることが判明した。

 未熟B細胞は大部分のものがnegative選択でアポトーシスに陥ることやマウスのstrain差で免疫系のThl/Th2への振り分けが違うことなどを考えあわせ、現在研究を行っている。


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