いかにして小胞体は新生分子を機能的な形に変え、異常な分子を排除するか                                和田郁夫(札幌医科大学医学部)

細胞は、酸化的な外部環境において安定に機能する蛋白を小胞体において作成し、正しい高次構造を作ったものを選択的にゴルジ体に輸送する。翻訳の場は還元的な細胞質であり、構造形成は輸送と共役し、さらに副産物として恒常的に形成される高次構造形成不全分子をその場で処理する必要があるため、分泌蛋白質の成熟化過程は、細胞質での高次構造形成とは異なる複雑な機構が必要とされる。
 小胞体膜を通過したタンパク中のシステインは酸化されジスルフィド結合を形成するが、これは構造形成における最も強い制約となるため、酸化的フォールディングはこの正しい架け替えを主な作業とする。本会では、a)その酸化の分子機構と構造形成との関連、b)構造異常糖タンパクの受容体と考えられる分子の同定とその作用機序に関する知見、c)構造形成の完了に伴う分子動態の解析、等を中心とした最近の我々の知見について紹介する。