「カリウムによる脳スライスのNa-K-Cl cotransporterの活性化と内因性光学シグナル」

北海道大学電子科学研究所 野村保友

 細胞外カリウムが増加すると、カリウムの取り込みに伴い、アストロサイトが膨潤すると考えられている。脳スライスの内因性光学シグナルのイメージングでは、透過光量を測定することでcell volume 変化をモニターできる。細胞外カリウム濃度が変化した時のcell volume regulationのメカニズムを内因性光学シグナルから検討した。isotonicの条件で4.5 mMから15 mMへカリウム濃度を3分間増加させると、可逆的に透過光量は増加した。この変化はTTXとキヌレン酸処理によって、興奮を抑制した条 件下でも観察された。Na-K-Cl cotransporter の特異的な阻害剤のbumetanideはこの 一過性のシグナルを可逆的に抑制した。脳スライスにおけるNa-K-Cl cotransporterの発現をwestern blotで調べた。Na-K-Cl cotransporterのアイソフォームの一つであるNKCC1を認識するモノクローナル抗体によって180 kDaのタンパクが検出された。 NKCC1の局在をGFAPあるいはGluRを用いたimmunocytochemistryで調べた。NKCC1はア ストロサイトよりニューロンで、さらに細胞体より樹状突起で多く発現していることが明らかになった。これらの結果から細胞外カリウムの増加によって、NKCC1の活性化を介して主にニューロンが膨潤することが示唆された。